宝物(Twitter300字SS)

伴美砂都

宝物

 通学路には小さなタイルがたくさん落ちている道があった。ももちゃんが見つけたのは薄桃色のまるいタイルで、とても綺麗だった。私が見つけたのはくすんだ色の縁が欠けた楕円だけで、悲しかった。けれど私は誇らしいような顔をして、それが宝物だと言い張った。


 桃色のタイルをももちゃんのお道具箱から盗んだのは私だ。ずっと持っていた。あの、これ、と差し出すと、ももちゃんは不思議な顔をした。


「え、……くれるの?」


 向こうから呼ぶ声に彼女はほっとしたような顔をして足早に去って行った。頭には私の手の中の桃色に似た、けれどもっと綺麗な飾りの簪があった。成人式の看板の前で、私はしばらく佇んだ。宝物はもう、とうに捨ててしまった。

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宝物(Twitter300字SS) 伴美砂都 @misatovan

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