第176話[完]

「じゃあこの二人はほっといて、エイトは薬を飲んでみろ」


「ほっといてってどういう事よ…」


ダレンがプクッと頬を膨らませるなか、エイトはカズキから薬を受けとるとチラッとダレンをみた。


ダレンが微笑むのを見るとグイッと小瓶の中の液体を飲み干した。


すると体がみるみると熱くなり息が上手く吸い込めずに苦しくなって倒れ込む。


「エイト!」


「エイト大丈夫!?」


皆でエイトの様子を心配すると、カズキがエイトを抱き起こした。


「体があ…つい…」


エイトが腕の中で熱く苦しそうに息を吐く。


「エイト…」


クイーンが心配そうにエイトの手をぎゅっと握りしめるとエイトがその手を握り返してきた。


「クイーンの…手…冷たくて…きもちいい」


クイーンの手を頬に当てると目を瞑りそのまま気を失った。


「エイト!?おい!この薬本当に大丈夫か!?」


「体が変化するのよ…そんな簡単にいくわけないでしょ?当然の反応よ、少しすれば目を覚ますわ」


「そ、そうか…」


カズキは倒れたエイトを抱き上げてベッドに寝かせる。


そのそばにクイーンとジャックが一緒に寝転んだ。


「エイト…」


クイーンはずっとエイトの手を握りしめていた。


しばらく様子を見ていると、手がピクリと動いた。


クイーンはその反応に気がつくと…


「やっぱり、男の方がいいね。だってクイーンは可愛い女の子が似合うから」


エイトが目を覚まして、クイーンを見ながら笑っていた。


「エイト…よかった…」


見ればエイトは元の男の子の姿に戻っていた。


エイトは寝ながらずっと手を握っていてくれたクイーンの手を見つめると


「ねぇクイーン、僕が大きくなったら…カズキじいちゃんやラルクさんのようにクイーンに結婚申し込んでいいかな?」


「え?結婚…」


クイーンがエイトの発言に戸惑ってしまった。


エイトの事は好きだが種族が違う…周りが許してくれるものなのかわからなかった。

ただエイトのそばに居られればいいと思っていたのだ。


「いい…の?」


クイーンは自分でいいのかと聞いてみると、エイトは笑ってこくりと頷いた。


「僕はクイーンがいいんだ…男に戻れたら絶対に言うと決めてたの」


「嬉しい…エイトとはどんな形でもそばにいようと思ってた」


「じゃあお嫁さんとしていてね」


「うん!」


クイーンの可愛い笑顔にエイトもつられて笑顔になる。


可愛い子供達の幸せな約束をカズキ達はそっと扉の向こう側で盗み見ていた。


「よかった…俺達はこの為にこの世界に来たのかもしれないな」


「ええ」


「それならここに来て良かったと心から思える」


カズキとナナミは自分達のここにいる意味をくれた息子の幸せな笑顔にお互い手を握りあった。




…終わり…

最後までお読み下さりありがとうございました。

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元勇者のおじいちゃんに育てられた子供は普通じゃありません 三園 七詩【ほっといて下さい】書籍化 5 @nawananasi

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