短編その十 不法侵入者

「ここは私の土地だから、出ていって!」

 私がそう言うと、目の前の男は優しい声で

「そんな事言わないでくださいよ」

 ニコニコとした笑顔を向けて、私の手を掴んだ。


「触らないで!」

 私は男の手を全力で振り払った。

矢澤やざわさん、落ち着いてください」

 それでもなお、男は私の手を掴もうとする。


「警察を呼びますよ!」

 私は全力で男から逃れようとする。

「それは困りますね」

 男は笑顔を崩さない。


「本当に警察呼びますからね!」

 私は電話を探す。

「わかりました、では私が警察に電話しますね」

 この男は何を言っているのだろう、警察に電話をかけたいのは私の方だ。


「その電話を貸してちょうだい!」

 男が持つ受話器を奪い取るとコールされている。

「110番かけましたからどうぞ」

 自分の方が正しいと思ってるのかしら、はらわたが煮えくり返る。


「出ないわね」

 コールが10回以上鳴るが警察は出ない。

「忙しいのでしょう、後でまたかけましょうか」

 警察も忙しい時くらいあるわね。


「そうね、また後で電話貸してちょうだい」

 あとで電話を貸してくれるのならいいわ。

「はい、必要な時は仰ってくださいね」

 案外悪い人ではないのかも知れないわ。



「ところでここは何処かしら」

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あなたがこれからゆく世界 〜人生の終わりは綺麗でありたい現代人たちへ〜 きりんのにゃーすけ @kirin_no_nyaasuke

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