第22話 アイドル

神島 「ねじれは強く、より複雑になる。」

それは、全ての物事に当てはまるだろう。

動物。植物。人喰い。そして人。

交わることのないハズだったものが交わることによって均衡を崩し、世界を崩壊へと導く。


神島「そんな世界だからこそ、私はぶっ壊すつもりだ。」

神島「金や利権に溺れた汚い大人を踏み台にし、全てを無に返す。全ては自然の摂理のままに。」

❮解放軍:神島 レイナ(??)レート???❯


桜花達の前で宗教じみた事を語り演説をしる暗い雰囲気をした女

彼女は知りたいのか、それとも知りすぎているのか。

その心の奥の真相は分からないが今言っていた言葉は真実だろう。


立て膝をつく桜花とそれを心配そうに見るシンヤ。そして、姫川と翔弥

勝敗は、もう着いていた。

神島「もう一度チャンスを与える。」

神島「桜花、隔離実験について知っている事を話せ。」


うつむき、少しの沈黙の後、ゆっくりと口を開く。

桜花「……ばーか。」

❮9番隊 隊長:喜多 桜花(21)レート790❯

桜花のその一言と共に神島の周囲には無数の剣が突如として出現し、包囲する。

桜花「無限刀剣……2式。」

桜花「囲郭都市」


辺りを見渡すも剣、剣、剣。

数十、あるいは数百にも昇る剣の包囲網は、対象者の原型を留めるわけがないなろう。

桜花は抑えていた右手を神島の方へとかざし、標準を定め、手を力強く握る。


神島「やはり中々面倒な能力だな……。」

無限に近い数で包囲をしていた剣達は、桜花の手の合図と共に神島に勢い良く襲いかかる。


流石にあの数しゃ防ぎきれないはず……

誰しもがそう思った。

剣の雨が神島の姿形が見えない程に降り注いでいる。


能力の覚醒。才能開花とはこれほどまでに強力なのか。シンタは目の前の事象を理解するのが精一杯だった。

高速で動く戦場は、ここまでわずか5分の出来事であった。


シンタ「勝て…そう……ですか……?」

❮9番隊 隊員:泉シンタ(17)❯

桜花「いや、無理だろ。」

桜花「よく見てみろ……。」

桜花が言った先に視線を寄せる

神島の足元に転がるのは先がねじ曲がった剣の墓だった。

シンタ「あの量の剣を……。1本1本ねじ曲げて……。」

言葉通り、勝てるわけがないだろう。


剣の雨が止んだ。

視界が晴れると無傷の神島の姿があった。

神島「往生際の悪さだけは認めよう。桜花。」


桜花「こりゃ勝てねぇわ……。」

苦笑いをしながら頭をカクンッと下に下ろす桜花。

神島は桜花をめがけて右手を掲げる。

神島「質問に答えろ。隔離実験について知っている事を話せ。」

神島「言えば命は取らん。」


絶対に勝てない相手を前に、絶対に漏らしてはいけない情報。

それは、シンタに聞かれてもマズすぎる内容だった。

桜花「知ってる事か……分かった……。……。」

ため息と共に、右手を下ろす。

桜花「私の知ってる事は、お前の腹が貫通されるってことぐらいだがな」


その言葉と共に、神島の腹部からは大量の血が流れ出ていた。

神島「ッ……。これは……。」

腹部を貫いた剣は桜花の能力ではなかった。


翔弥「俺は、桜花さんと約束があるんだ……。こんな所で死なれちゃ困る……。」

❮居間 翔弥(15)❯

翔弥の才能は「無意識領域」

人や人喰いの無意識の内側に入り込む事で、気配を眩ませる事が出来る。

以前、桜花と対峙した時に使用したがその際は1対1。意識を集中すればどうという事はない。


神島は完全に桜花に気を取られていた。

気がつかなかったのはその為だろう。

神島「……。」

神島「……惜しかったな。」

捻れで空間は歪む。空間が歪めば時間が歪む。


翔弥「あれ……。。。」

貫いたハズの刃は何故か自分を貫いていた。

さっきまで剣を持っていたハズなのに神島が剣を持っており翔弥を貫いていた。

何が起きたか全く分からなかった。

翔弥「なんで……。。。」


シンタ「翔弥!!」


神島「時間をねじ曲げた。」

神島「君が私を刺す前に、私は君に気付き君から剣を奪い逆に刺した。」

翔弥はその場に倒れてしまった。流れ出る血の海と共に。


左腕を抑え、立て膝をつく桜花。

血と共に倒れてしまった翔弥。

その光景をただ見ているだけしか無いシンタ。

そんな時だった。一番後ろ。大きな顔の前で足がすくみ、座り込んでいた彼女が立った。


姫川「皆さん!今日は私の為に来てくれてありがとう!」

姫川「よろしければ、一曲!聞いていってください!」

❮姫川 莉菜(16)❯

彼女は元気良く立ち上がった。足は震えていて、手が落ち着いていない。

そんな恐怖に囚われた状況の中でだった。

そして、歌いだした。

綺麗で透き通っていてそして、聞いていて心地の良い歌声だった。

神島「何の真似だ。」

神島は手をぐるりと回した。

姫川の首もとが徐々に絞まっていくのが外から見ても分かった。

姫川「あっ。うぅ。」

それでも、少しでも歌おうと懸命に声を絞り出す姫川。


神島「桜花……。エデンの時の二の舞になるぞ。」

神島「早く知ってる事を言え。」


桜花は少しの沈黙の後、悔しそうに声を出す。

桜花「分かった……。話す…。だからその娘を離してやってくれ……。」


シンタ「桜花さん……。」

その返事を聞いた神島はスッと手を元に戻す。

姫川は首を両手で抑え、苦しそうに倒れ込み咳き込んだ。


神島「さぁ。早く言え」

神島は再び右手を前に出す。


桜花「その前に、ちょっと待ってくれ。ニコチンが切れちまってよ……。上手く話せねぇんだわッ。」


そう言い、抑えていた右手でライターを胸ポケットから出す。

ライターを口元に寄せる。

桜花「お前も吸えよ……。」

口から発したその言葉と共に神島にライターを投げつける。


力無く投げたライターは神島の横を素通りして一人の男の手の中へと収まった

宮代「俺さ、タバコ。吸わないんだよね。」

❮1番隊 隊長:宮代 瑠々(20)レート996❯


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人喰少年 SR@毎週土更新 @sr1000

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