第21話 勝てる訳が無い
桜花「神島レイナ……。何で……こんな所に……。」
❮9番隊 隊長:喜多 桜花(21)レート790❯
額から汗が滲み出る。目の前の強敵にこれだけ焦りを感じたのは一体、いつ以来だろうか。
シンタ「あの人……。一体何者何ですか……。」
❮9番隊 隊員:泉 シンタ(17)レート120❯
暗闇に閉ざされ、後ろから大きな顔面に不気味に睨み付けられる異様な空間で困惑と恐怖の両方に襲われるシンタ達。
彼女のその佇まいや雰囲気は明らかにレベルが違う。
桜花「HHAに敵対してる組織に、エデンともう一つ、解放軍っていう組織があるんだけどよ」
奴がここに居る理由がわからない……。
普段は大人しく自分の家に籠ってるハズじゃないか?
桜花「その解放軍の創設者で、現トップの人間……。」
桜花「HHA元2番隊隊長……。神島レイナ…。」
訓練学校座席時、HHAについて勉強の時間があった。
HHAの創設年と創設者。現メンバー。
過去の出来事。
そこに、神島レイナの事が少しだけ書かれていたの思い出した。
HHA最大の汚点と呼ばれた2番離反事件。その首謀者。と。
シンタ「聞いた事があります……。その名前……。」
目の前の女が正にその事件の張本人であることは疑いの余地も無いだろう。
その圧倒的な威圧感は強者にしか出すことは出来ない。
桜花「んでさ。因に豆知識だけどよ……」
ゴクリと唾を飲み込む。
桜花「HHAにいた時のレートは……」
桜花「880……。」
桜花「私より”全然強い”」
聞いた事の無い驚愕なレートの高さ。
絶望感がより一層に増す。
今まで出会ってきた中での最強の敵
神島「久しぶりだな……。桜花……。」
❮解放軍:神島 レイナ(??)レート???❯
フードの下から透き通るように綺麗な声がシンタ達に響く。
桜花「あぁ……。久しぶり……。」
自分の体で手を隠し、小石を握るのが見えた。
桜花「何でてめぇが……。こんな所に……。」
緊張感が漂う……。
その沈黙は逆に自分達に焦りを匂わせる。
桜花(焦るな……。落ち着け……。先手のタイミングを間違るな……。。)
神島「一つ聞こうか。桜花。」
桜花「何を……?。」
神島「HHAの”隔離実験”が漏れた事についてだ。」
桜花「何でお前が……その事を……。」
その言葉を聞いた瞬間。桜花は動揺を隠せずにいた。
知ってはならないHHA最大のタブー。禁忌の情報。
その情報を知っている隊員はHHAでもごくわずか、隊長の中では桜花しか知り得ないハズの情報だった。
シンタ(隔離実験……?何の事……?)
神島「それを知っててHHA居るとは……驚きを隠せないのはこちらなのだがな」
桜花「誰がそんな事言うかよ。」
瞬間。隠していた手を振りかぶり小石を投げた。
「大槍」
小石はみるみると形を変え、大きな鉄の槍へと変貌を遂げ、神島をめがけ一直線に向かう
神島は見切っていたかのように右手を槍の方へと掲げる。
掲げた瞬間、神島の目の前で槍は空中に静止し本来曲がるハズの無い方向へ方向へとぐねぐねにねじ曲がった。
桜花「おいおい……。マジかよ……。」
そんな情けない言葉が苦笑いをする桜花の口から漏れてしまう程だった。
翔弥「えっ?……。これどういう状況……?」
❮居間 翔弥(15)❯
後方にいた翔弥が戸惑いながらも隣にいた姫川に話し掛けていた。
姫川「莉菜が聞きたいんやけど」
❮姫川 莉菜(16)❯
戸惑う二人と緊張感が走る二人。
状況は同じだが、分からないだけでこうも持ち前の気持ちが違うのだろう。
神島「私の質問に答えろ。桜花。」
神島「次、何か行動を起こせば、貴様の左手を貰う事にした。」
右手を掲げながら放つその言葉の説得力は強く、桜花も従うざるおえないだろうとシンタは思った。
桜花「チッ………。」
神島「もう一度、問おう。桜花。」
神島「隔離実……」
その言葉を遮るように桜花は立ち上がりポツリと呟いた。
桜花「才能開花」
桜花「無限刀剣」
その言葉と共に、辺りの空気感が一瞬にして変わった。
空気が震える。
桜花の周りには様々なありとあらゆる武器がそれも無数に空中出現していく。
数十、数百、あるいはそれ以上あるのかも知れないというほどに
シンタ「才能開花……。」
シンタはその言葉を聞き、その現象を見ると絶望的なハズの状況も、少しだけだが心踊る状況へと移り変わった。
才能開花。それは、レート700以上の、つまり隊長級にならないと使えない自分の才能を限界まで極めた究極の技法。
自分の才能を限界まで引き出したその技は、教科書の中では文章だけであったため、現実でそれを見るのは始めてだった。
桜花が手を天に掲げる。
出てきた無数の武器が一斉に神島の方へと矛を向く。
桜花「使うつもり……無かったけどな」
桜花は体全身を使って勢い良く投げた。
野球の投球フォームのように綺麗なフォームで1本の剣が本当にそのスピードで投げられたかのように目にも止まらぬ早さで神島を襲う。
神島はそれをなんなくねじ曲げる。
また1本、そして1本、どんどんと投げていく。
それを何本も空中でねじ曲げていく。
その戦いは、シンタには速すぎてもはや目で終えない程であった。
瞬で飛んでいく無数の武器を凄いスピードでねじ曲げていく神島レイナ。
その均衡は変わらないと思っていた
だが─
神島が右手で武器を抑えている最中に、次は左手を反時計回りにグルっと周した。
それは、桜花が次の武器を投げる間際だった。
桜花「ッ……!?」
一瞬、時が止まったかのように見たその光景
自分の左腕があらぬ方向へとぐねぐねに曲がっていた。
シンタ「桜花さん!!」
シンタが叫んだその方向には左腕を抑え膝で立つ桜花の姿だった。
膝立ちをした瞬間無数の武器は空中から落ちた。
シンタ「強すぎる……。あの女の人……。」
勝てる訳が無い─
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