第20話 恐怖
姫川 「HHA?莉菜が?」
❮姫川 莉菜(16)❯
シンタ、翔弥、姫川、その場にいた誰もにとって思ってもいない誘いだった。
桜花「あぁ。そうだ!面白そうだろ?」
❮9番隊 隊長:喜多 桜花(21)レート790❯
笑みを浮かべ、運転席から後ろの3人を見つめる。
シンタや翔弥は少し下を向いてどちらも考え込んでいる様子だった。
シンタ(大丈夫かな……?)
翔弥(……。腹減った……。)
姫川 「嬉しい誘いやけど……。ごめん。やめとくわ……。」
姫川は両手を合わせ、申し訳なさそうにペコリと頭を下げる。
シンタと翔弥はその断りを聞いて少しホッとしている様子だった。
桜花「そうか……。残念だな……。」
姫川「別にアンタらが嫌いって訳ちゃうよ?さっき助けてくれた事は、ほんまに感謝してるし!ただ……。」
莉菜は、歌で皆を元気付けたい。笑顔で皆を勇気付けたい。
戦わなくなっていい。これが莉菜の戦場だから……。
姫川「莉菜のやりたい事は、笑顔で歌って踊って、皆を元気付ける最高のアイドルになる事やから。」
何故だろうか、閉じているハズの目なのにそこから強い意志が見える。
桜花「まぁ。分かったよ。そこまで信念があるならしゃーないわな。」
桜花も無理強いはしないようだった。
シンタと翔弥と姫川と桜花。
車の中にいる全員が全員、別々の意思を持っている。
それは、当たり前だ。全員の意思が一直
線に繋がる事なんてまずあり得ない。
桜花「家まで送るよ。」
姫川「ほんま?ありがとう。HHAの人。」
車が走り出す。車の中はとても静かでシンタと翔弥はきまづいのか全く会話がなかった。
シンタ(気まづい……。何喋ったらいいんだ?)
シンタは後ろに座る翔弥をチラッと見た。
首がカクッと横に流れ、口からはスースーという声が漏れている。
間違いなくあれは寝ている。
何か会話をしなければ……。
シンタ「君ってさ、何で東京来よって思ったの?」
姫川「夢やったから……。」
姫川「東京で有名なって!全国回って!」
姫川「世界中を飛び回って、困っとる人とかに莉菜の歌を届けんねん!」
姫川「そしたら皆、生きようってなって!頑張ろうってなって!莉菜はそれが嬉しいし良いこといっぱいやん!」
そう言い、シンタの方を向いてニコリと笑みを浮かべる。
やっぱり、この娘。本当に歌が好きでアイドルとしての自分に誇りを持ってるんだな……。
隠している事なんて無さそう。
少し下を向くシンタ
深層心理。
開けたくないな……。この扉は……。
昔の事は覚えている。まだ桜花さんに話してない事もたくさん……。
でも、その最奥に眠る俺の記憶は固く閉ざされていて、開けれるけれども開けたくない。
ここを乗り越えないと強くなれないなんて自分でも分かってるハズなのに……。
どうして……。
姫川「何かくる……。」
姫川がスッと顔を上にあげる。
シンタ「えっ?どうしたの?」
姫川「莉菜、耳がめっちゃいいから分かるんやけど!」
姫川が焦ったように声を出す。
姫川「えぇっと!隊長の人!ブレーキ!今すぐ!」
桜花「えっ?何で?」
姫川「いいから早よして!」
その場で急ブレーキを踏み込んだ。
アスファルトの道路には急なブレーキ根が厚く刻まれ、住宅街のど真ん中だったが、後続車が居なかったため最悪の事態にはならずに済んだ。
シンタ「えっ……。ちょっ……。どうしたの?」
ブレーキの衝撃か、頭を少し撫でながら隣の姫川の方へ向く。
姫川「一部の草木が尋常じゃ無いくらい揺れる音が聞こえてん。」
姫川「って事はな?めっちゃ強い奴がそこ通ったとかしか考えられへんねん。」
桜花はブレーキを踏み込んだあと、ハンドルを握りながら、ごくりと唾を飲むように前1点を集中して見ていた。
シンタ「どうしたんですか?桜花さん?」
後部座席から運転席を覗き込もうとした瞬間だった。
シャリン。鈴の音が聞こえた。
ふと鈴の方へと視線を寄せると、フロントガラスの前に灰色のパーカーでフードを被った女性?が立っていた。
見た瞬間分かった。
コイツはヤバい……。
ピエロとか、駅で襲われた奴とか。そんなレベルじゃない。
一言で言うなら次元が違う。
それくらいの人間が今まさに、目の前に立っている。
シンタ「桜花さん……アイツ……何者何ですか……」
異様な雰囲気に辺りが包み込まれていく。
敵という事だけは分かる。
桜花「神島レイナ……。どうすれば……。」
それは、目の前で桜花から出た始めての弱音だった。
フロントガラスの前の女はブツブツと一人事を言い始めた。
???「……審判」
その一言で辺りが暗闇に閉ざされた。
自分達は車に乗っていたハズなのに、気づけば皆真っ暗の地べたに居座っていた。
桜花は前を向いたまま固まっている。
姫川は何が何だかよくわからない様子だった。
翔弥も今起きたのか何が何だかよくわかっていない様子だった。
桜花「皆……。」
その場にいる全員を呼び止める。
異様な閉ざされた闇の空間。
桜花「今から最悪の質問タイムが始まる……。」
そう言った皆の後ろには閉じた目から地を流した異様に巨大な白い人の顔がたたずんでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます