第240話 旅立ちの後 2
フィルランカは、リズディアに話しかけられていたが、横からイルーミクが話しに入ってきたことで、モカリナとイルーミクの話しになってしまった。
そのことで、フィルランカとカインクムは、話しだすタイミングを失っていた。
フィルランカもカインクムも、エルメアーナを見送りに来たのだが、2人とも、顔を合わせられないという事だったので、金糸雀亭の食堂に隠れていて、エルメアーナが馬車に乗り込んだところで、金糸雀亭のロビーに移動して、馬車が動くのを隠れて見ていたのだ。
特に、フィルランカが、エルメアーナに顔を合わせにくかった。
カインクムは、問題なく話はできただろうが、カインクムが顔を出して、フィルランカが、来てないなんて事はあり得ないと、エルメアーナが思うだろうと思ったことから、カインクムも顔を出すのをやめたのだ。
そして、フィルランカの様子を確認していた。
カインクムは、フィルランカと一緒に影に隠れていたが、時々、フィルランカが、申し訳なさそうに涙を流していたのを、カインクムは、慰めるようにしていたのだ。
カインクムとしたら、フィルランカに対する責任もあるので、フィルランカの気持ちも考えながら、エルメアーナに会わなくてならない。
それに、裸の2人がベットにいることを、エルメアーナに見られてしまい、その事によって、エルメアーナの様子が、おかしくなってしまったと、2人は思っている。
フィルランカとしたら、エルメアーナのトラウマを知らないので、カインクムと自分の関係が元で、あのような状態になってしまったと思い、責任を感じ、エルメアーナの前に出られずにいるのだ。
そんなフィルランカが、気になった事もあって、カインクムもエルメアーナの前に出なかった。
2人は、隠れて、エルメアーナの門出を見送った事もあり、この場で、自分から何かを話せるような精神状況では無かったのだ。
カインクムは、いつでも、フィルランカを庇うことができるように、直ぐ、手の届く範囲になるように、フィルランカの左後ろで、待機するように立って、リズディアの次の言葉を待っていた。
ただ、カインクムは、リズディア達の言葉から、エルメアーナに、何らかの仕事を任せようとしていることは、伝わったようだ。
(ジュエルイアンのやつ、中金貨3枚もの買い物をするなんて、どういうことなんだ? そんな大金を出せるってことは、あいつ、どれだけの商売をしようと思っているんだ)
カインクムは、金額の大きさに驚いていた。
貨幣については、白銅貨・黄銅貨・中黄銅貨・銅貨・中銅貨・銀貨・中銀貨・金貨・中金貨・大金貨と、10種類の貨幣があり、それぞれ、10枚で上の貨幣と変換可能となる。
中金貨ともなると、白銅貨1億枚となる。
そんな大金を、ジュエルイアンは、簡単に出すと言ったのだ。
カインクムは、フィルランカほど動揺しているわけではないので、ヒュェルリーンが提案して、ジュエルイアンが了承し、その話から、リズディアは、新たな儲け話が、ジュエルイアンの元にあるのだと、確信していた。
カインクムとしても、ジュエルイアンが、エルメアーナにどんな仕事を任せようとしているのか、興味があった。
だが、今は、フィルランカの事の方が、気になっているようだ。
(そうだな。 今は、フィルランカを気遣ってやらないと、……。 エルメアーナは、ヒュェルリーンに任せてあるのだから、俺がケアしなければならないのは、フィルランカだ。 フィルランカまで、元気を無くなったままでは、……。 そうか、フィルランカを元気にさせないと、エルメアーナが帰ってきた時、また、エルメアーナを悲しませてしまうのか)
カインクムは、何か、納得するような表情をした。
(そうか、俺は、エルメアーナが帰ってくるまで、フィルランカを幸せにさせておくことか。 エルメアーナは、怒っているわけじゃない。 エルメアーナは、気持ちの整理ができてないだけなんだから、気持ちの整理ができたら、戻ってくるはずだ。 戻ってきたら、また、3人で暮らすことだって、できるはずだ)
カインクムは、吹っ切れたような表情をすると、フィルランカの右肩に、自分の手を置いた。
そして、フィルランカは、その手を見て、カインクムの手だと分かると、左後ろにいるカインクムを見た。
「フィルランカ、エルメアーナは、戻ってくる。 だから、悲しい顔はしないでくれ。 エルメアーナが、戻ってきた時、そんな顔をしていたら、また、エルメアーナは、家に帰れなくなってしまうだろう。 エルメアーナは、お前の事を認めているはずだ。 そうじゃなければ、気持ちの整理がつくまで、なんて言う事はない。 エルメアーナは、気持ちの整理がついたら、帰ってくるつもりなんだ」
カインクムの言葉を聞いた、フィルランカは、ボロボロと涙を流し始めた。
そして、両手で顔を隠し、肩を震わせていた。
「だから、フィルランカ。 お前は、俺の家で、幸せになるんだ」
フィルランカは、顔を両手で覆ったまま、振り返ると、カインクムの胸に顔を押し当てて、泣いてしまっていた。
「エルメアーナのために、俺たちは、幸せにならないといけない。 エルメアーナの居場所を、……、帰ってくる場所を、ちゃんと、用意しておこうじゃないか」
フィルランカは、声を我慢していたが、今の一言で、声を出して泣いてしまった。
カインクムは、周りを気にする事なく、フィルランカを宥めるように、軽く抱き、子供をあやすように背中を軽く叩くのだった。
フィルランカの思いが報われる時 パワードスーツ ガイファント外伝 〜10年以上続けた思いが報われる時 結ばれる者と見守る者 あり得ない恋愛関係〜 逢明日いずな @meet_tomorrow
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