第4話 かえったもの

 ニュースから4日後の夕方、為井はバイクで家まで迎えに来てくれた。

バスタオルに卵を包んで抱きかかえる。こんなにも大きくなったのかと親のような気持ちになった。為井のバイクの後ろに、卵を落とさないよう抱えて座ると、「お前ごと落ちるぞ」と言われてた。ちょっと気恥ずかしかったが為井の腰につかまった。

 昼の熱気を残すムッとした風が顔に当たる。バイクのエンジンで為井と卵と私が震えた。

 海浜公園に着くと、海風はひんやりとしていた。流星雨の夜で、想像していたよりも人は多かった。人が少ないスペースに腰を下ろす。


流星雨の降る夜。宇宙の卵は少しずつ流れて溶けていった。


•••••••

 卵が還ったあと、私は研究室に入れてもらえることになった。久しぶりの受験勉強、久しぶりの履歴書。辛い日もあったけど、忘れかけていた夢をまた追えると思うと頑張れた。

 研究室に入り、学生時代のように試験管を睨みつける日々が続く中で、為井の姿が見えないことが気になっていた。教授に聞いてみても、そんな奴はいないと言われるばかり。同期に尋ねてみると、たしかに為井という同期はいたが在学中に事故で亡くなっていた。在学中ということは、3年以上前のことになる。卵を還しに行く途中のことだったという。


 為井は多分、卵と共に宇宙へ還って行ったのだと思う。


「さて、」


昨日と同じような、少し違うような。


カーテンを揺らす風は、昨日よりも少し冷たくなった気がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

宇宙の卵を見つけた時、私はコーヒーを飲んでいた。 .sei(セイ) @sei58340

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ