第3話 大きくなる卵
柄だと思っていたのは、卵の中身だったらしい。殻は透明なのだと言う。ニワトリの卵でいうと黄身に当たる位置で、光の渦はどんどん大きくなっていった。
卵が引き出しに収まらなくなり、私の枕元にタオルを掛けて一緒に寝るようになった。卵の成長は止まることなく、2リットルのペットボトルのサイズになると抱きかかえて眠るようになった。でも、不思議なことに大きさは変わっても重さは見つけた時とあまり変わっていないようだ。
卵を抱えて寝るようになり、1週間が経った。それまでは毎日大きくなっていた卵の成長が急に止まった。為井に相談すると、研究所の教授に話を聞いてもらえるよう掛け合ってくれるそうだ。
••••••
久しぶりの研究室。規則正しく並んだ試験管の中には、見慣れた濃紺の宇宙や、赤っぽい宇宙、黄色い宇宙なんてのもあった。巨大な水槽には巨大な星クラゲが傘を開いたり閉じたりしている。所狭しと並んだサンプルたちに懐かしさが込み上げてくる。
教授曰く、近々卵は宇宙へ還るそうだ。星がよく見える場所に持っていくと一晩のうちに消えてしまうという。少し寂しいと思いながらも、頭の片隅ではこれは必然だと他人事のように囁く声がしていた。
ペルセウス座流星群が見頃を迎えるというニュースをを見て、見頃の間にに卵を還しに行くことになった。場所は近くの海浜公園。為井と一緒に。
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