第2話 渦巻銀河
ところが、翌朝。卵は少し縮んでしまっていて、光の粒も減ってしまったようだった。大学の同期で、まだ研究を続けているらしい為井豪(ためい ごう)に連絡をとってみたところ、直射日光は厳禁だが、冷蔵庫もまたいけなかったという。冷蔵庫の10℃という温度が低すぎるそうだ。ならどこがいいのかと聞くと、室温の25℃程度が保てる直射日光が当たらないところだという。とりあえず、玉ねぎやジャガイモと同じところに入れてみた。翌朝、卵が縮むのは止まったようだったが、光の粒はさらに減っているようだった。
卵の様子を見に為井が家へ来た。冷蔵庫から出して玉ねぎやジャガイモと一緒にしていたと告げると「馬鹿か」と言われた。食べ物ではないので食べ物と一緒に置いておくものではないらしい。幼い頃に見た図鑑の「太陽が当たらないところ」という条件しか覚えていなかった。どうやら正解は机の引き出しの中だったらしい。書類を整理して卵をハンカチに包んで置くことにした。
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机の引き出しの中とは卵にとって最高の条件らしく、光の粒が増えて大きさも小指の先くらいから少し大きくなっていた。引き出しに移してから、卵はぐんぐん成長していった。
学生時代の研究資料を実家から送ってもらった。プリントのすみの落書きを見て、学生時代の思い出に浸りながら資料を捲る。為井にも指摘されたことだったが、引き出しに入れっぱなしもよくないらしい。そこで、出勤前に引き出しから出して柔らかく日の当たるところに置いて、寝る前に引き出しに戻すことにした。
何日かすると、卵は見つけた時の大きさに戻っていた。さらに同じような生活を続けていると、卵はますます大きくなり、卵の中央に光の粒が渦を巻くようになっていった。
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