宇宙の卵を見つけた時、私はコーヒーを飲んでいた。

.sei(セイ)

第1話 宇宙の卵

8月某日。朝、アイスコーヒーを作っている時だった。

 インスタントコーヒーをケトルで沸かしたお湯で少し溶かして、かき混ぜる。氷を入れて、冷たい水を入れてさらにかき混ぜる。氷がぶつかり合うカラカラという音と、昨日か一昨日かの空気が吐き出されるシュワシュワという音。いよいよ気温が上がり始めた夏の空気の中に溶けていく。頭の中で今日の予定が整理されていく。


 ぼーっと視線を巡らせていると、食卓テーブルの上にある塩と胡椒の瓶の間に青と紺のマーブル模様を見つけた。親指ほどの大きさのビー玉のようで、持ち上げて光にかざすと小さな光の粒がキラキラと跳ねた。思わず声が漏れる。そして、私はそれが何かを知っていた。


「宇宙の、卵」


•••••••

 

 学生時代は、試験管を覗き込む毎日だった。採取した真夜中や流星群をただただ見つめる毎日。いつか宇宙を育ててみたいと思っていたが、結局は諦めてしまった。幼い頃に図鑑で見た宇宙の卵。夢にまで見ていたものが今この手のひらに乗っている。


 はっと我にかえり、保存場所を探して部屋を見回し、とにかく夏の直射日光はいけないからと暗くて温度の低い冷蔵庫に入れてみた。そんな普通の卵みたいな扱いでいいのか少し悩んだが、熱くなりすぎるよりはいいだろうと考えたからだ。冷蔵庫を開けると鶏の卵に混ざって、憧れの宇宙の卵が並んでいる。その光景がなんだかおかしくて、何度も卵ケースを覗いていた。

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