平日のスーパーは別世界だった
春・夏・秋・冬
俺は、贅沢な時間を過ごした。
決して楽な日々ではなかったけれど。
ねんね
首がすわる
寝返り
おすわり
歯が生える
ハイハイ
あと追い
つかまり立ち
立った!
その瞬間瞬間に立ち会えた。
人って一年でこんなに成長するんだ。
小学生だってかなり成長するけどさ、この変化は劇的だよ。
陽奈は、娘だから積極的に関われるのはあと10年位かもしれない。
高学年の女子は、だんだん父親から離れていくからね。
嫌われたら……悲しいなぁ。
そうならないように頑張ろ。
今も大変だって思うけれど、成長するに従って違う困難が出てくるだろう。
悩み、立ち止まり、喧嘩する日もあるだろう。
自分の仕事が忙しくなって、目をかけられない時もあるかもしれない。
成績だ将来だと考えるうちに、欲が出てしまう時もあるかもしれない。
そんな時は、この原点を思い出そう。
只々懸命に、この子を向き合った日々を。
とんでもないカオスと喜びが交錯した毎日を。
この子がここに居てくれる尊さを、じんわり感じたこの時間を。
実は、俺が育休を取る時、一番の抵抗勢力は俺の母だった。
「男子厨房に入らず」とまではいかなくとも、自分が子育てをやったという自負があるからだろうか、
「お前が可哀想、陽奈が可哀想」
的な事を何度も言われた。
やはり育児は母親中心だと思っている人は、まだまだ少なくないと思う。
けれど、自分でやってみて分かったのは「母親にしか出来ないことは、直接母乳をあげることだけ」という事だ。
それ以外の事は、誰でも出来る。
最初から上手くなんて出来ない。母親だって、父親だって初めは育児の素人から始まるんだ。何事も少しずつやれるようになれば良い。
育休に入ってから行った、平日のスーパーは別世界だった。
なんていうんだろう。
客層? 混み具合? 俺の心?
何のせいかは分からないけれど、空気が違う。
これまで知らなかった日常が、そこにあるような感じがした。
今見えているものが全てじゃない。
それを現役時代に知る事は、きっと自分の財産になる。
もし、貴方に育休のチャンスがあるならば、チャレンジする事を検討して欲しい。
きっと、見えるものが変わっていくんじゃないかな。
そして、それは貴方や周囲の大切な人々にとって、かけがえのない日々になるだろう。
「赤城先生、表情が柔らかくなりましたね」
復帰してしばらくしてから、校長にそう言われた。
同僚にも同じような事言われたから、以前より優しさプラスになったらしい。
児童にも、保護者にも寄り添う余裕が出来た気がするから、俺の場合は仕事にも良い影響があった気がする。
また、「働ける」事はありがたい事だって、改めて気づくことができた。
こうした機会を授けてくれた全ての人に、本当に感謝している。
ありがとう。
*赤城の育休メモ*
育休は、いいことばかりじゃ無い。
給付金は出るものの、給与全てを補填するものではないから収入は減る。社会との繋がりが無くなったようで孤独に感じる。職場に負担をかけるし、キャリアダウンへの懸念などデメリットがある場合もあるだろう。
育休を取らなかったとしても、やれる事はたくさんある。何より育児も家事もパートナーと「一緒にやる」っていう気持ちで取り組むことが大切なんだと思う。
互いへの思いやりを忘れずにね。
平日のスーパーは別世界だった 碧月 葉 @momobeko
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