僕の夢と君の願い
アカト
僕の夢と君の願い
僕、新藤匠(しんどうたくみ)には絶対に叶えたい夢がある。小説家になる事それをずっと思い続け生きてきた。
辛いことがいくらあっても、それだけを目指してきた。どんなにキツくても、僕を突き動かした。
「負けない。絶対に負けない」
僕は歯を食いしばって頑張り続けた。
だが結果はなかなか出なかった。
「この前応募した賞もいい結果でなかったな。何がダメだったんだろう? でも負けないぞ」
僕は賞に落ち続けても少し泣いて次の日には新しいものが書けていた。
だがある日のことだった。
僕にとって自信作で賞に落ちてしまった時、僕は涙が出なかった。
そして書く手も止まってしまった。小説を書くのが怖くなってしまった。
だがそんなスランプの時、僕のたった一人の親友、冬月健太(ふゆつきけんた)が遊びに誘ってくれた。
「今日は一旦小説のことは忘れて思いっきり遊ぼうぜ」
健太が僕の手を引いてまずはカラオケにやってきた。
僕も健太もアニメが大好きなので、一緒にアニソンを歌ったりしてすごく盛り上がった。
「匠とカラオケ来たのいつぶりだろうね。最近ずっと匠はパソコンと、にらめっこばっかりだったんでしょ。たまには息抜き覚えないとダメだよ」
健太は僕のことを心配して、今日遊びに誘ってくれたんだと思うとすごく嬉しかった。
それからゲームセンターに行ったり、最近のアニメの話をして盛り上がった。
「今日は僕のこと誘ってくれてありがとう。健太のおかげで元気出たよ。これでまた頑張れるよ」
「それなら良かった。匠は頑張りすぎる癖があるから心配だったんだ。でも俺が役に立てたなら良かったよ。また遊ぼうね」
僕は健太と親友で本当に良かったって改めて実感した。僕のことをこんなに心配してくれる人がいるんだってことがわかって、僕はより一層小説に頑張ることができそうだった。
それから僕は気分転換が良かったのか、分からないが小説がまた書けるようになっていた。
「本当にこれだから健太には助けてもらってばかりだな。いつか健太が困ってる時、僕も助けてあげないとな」
僕は健太のおかげで小説のスランプを脱した。
僕はそれからも小説を書き続けた。
だがそんなある日、親友の健太が自殺したと健太のお母さんから連絡がきた。
僕は携帯を持ちながら膝から崩れ落ちた。
「僕はなんで健太の支えになってやれなかったんだ。健太は僕の辛い時支えてくれたのに」
僕は泣きながら健太の辛さに気付けなかったことを後悔した。でも後悔するのがあまりに遅かった。
僕は健太の家に行きお線香をあげさせてもらった。
「今日はわざわざ健太のために来てくれてありがとね。これ健太が匠くんに書いた手紙があるんだけど受け取ってくれる?」
「いえいえ。健太は僕の親友だったので、手紙ですか? いただいていいんですか?」
僕は手紙を見るのが少し怖かった。健太の辛いときに何もできなかった僕に健太が優しい言葉があると思えなかったからだ。
「大丈夫だよ。健太は匠くんを恨んだりしてなかったから匠くんが想像してるような手紙ではないと思うよ」
健太のお母さんは僕の気持ちがわかったらしく健太が恨んでなかったことを伝えてくれた。僕は勇気を出して健太の最初で最後の手紙を読んだ。
「匠、君とは本当にずっと仲良く遊んでたよね。匠の夢の話を聞くたび俺は頑張ってる匠を見て自分も頑張ろうと思えた。君は本当に頑張り屋だよね。そんな君の支えになりたくて俺は君の悩みなどを聞いたけど俺は先にあの世に行くね。匠は夢を叶えてゆっくりあの世に来るんだよ。俺は君の事をあの世でも応援し続けるからね。近くで君が夢を叶える姿が見れなくて本当に残念だし先に君の前から消えてしまってごめんなさい。でも匠なら絶対に夢を叶えられる、だから夢を諦めないで。俺は匠がプロの小説家になるのをあの世でちゃんと見てるから。君の夢は俺の願いでもあるんだよ。今までたくさん遊んだりしてくれてありがとう。匠のおかげで楽しい人生だったよ。もう支えてあげられないけど夢を諦めないで」
健太は最後の手紙にも僕を励ます言葉で溢れてた。僕は手紙を読みながら涙が頬をつたった。
「健太はずっと匠くんのこと親友だと思っていたよ。自分には夢が何もないから匠が羨ましいっていつも私に話してたんだよ」
健太のお母さんが僕に健太のことを話してくれた。
「僕がもっと健太のこと心配したり出来ていれば健太も死なずにすんだかもしれない。僕は親友なのに健太のことわかってあげられてなかったのかも」
僕は親友の健太のことをわかってるつもりだった。でも健太は僕に何も言わずに死んでしまった。もっと健太の悩みを親身になって聞くべきだった。健太は僕の唯一の理解者だったんだから、僕も健太のこと理解してあげるべきだった。亡くなってからそんな大事なことに気付くなんて遅すぎた。
「僕は本当に健太の支えになってあげられてたのかな?」
僕は涙を流しながら健太のお母さんに問いかけた。
「ひどいこと言うかもしれないけど、私には健太の気持ちはわからない。でもね健太はいつも夕飯の時は必ず匠くんの話をしていたよ。匠はすごいんだよって嬉しそうに話してくれていたよ。健太にとって匠くんはとても大事な存在だったんだと思うよ。だからこそ匠くんは健太の分も幸せになって欲しいな」
健太のお母さんも目を赤くしながらも僕の幸せを願ってくれた。
「すみません。今一番辛いのはお母さんなのにこんな弱音ばかり吐いてしまって。僕、健太の分も頑張ります。あの世の健太が安心できるくらい夢を叶えて幸せになります」
僕はそう言い健太のお母さんにお辞儀して健太の家を後にした。
そうだ。僕には健太が応援してくれた夢があるんだ。健太のためにも自分自身のためにも夢を叶えて健太のお墓参りに行き夢を叶えたことを報告できるように頑張ろう。
それから僕は寝る間も惜しんで小説を書き続けた。いくつも賞には落ちたがそれでも僕は書き続けた。凹んでる暇なんて僕にはもうなかった。そんなことをしていたら、あの世の健太に心配されてしまう。
そして健太が亡くなってから三年が経った日のことだった僕の作品がやっと賞に受かったのだった。だがすぐにプロになれると言うことはなかった。それでも僕はいつか自分の本が書籍化されてその本を健太のお墓に持って行く、それが僕の今の目標になっていた。
それからも僕は小説を書き続けた。徐々に語彙力や小説の書き方なども理解していき力がついてきた実感はあった。
昔の小説を見ると、これじゃあ賞に落ちても当然だなと思うくらい今の方が色々と成長していると思えた。
そして健太が亡くなって五年が経つ頃にようやく大きな賞に受かり書籍化のお話をいただけた。僕はよろしくお願いしますと伝えた。ようやく僕の夢と健太の願いが叶う日がやってきた。
そして書籍化の話が進みようやく僕の本が出ると言う前日の夜のこと、僕の夢に健太が出てきたのだった。今まで夢に出てきてくれなかった健太が僕に笑顔で手を振っていた。
「健太にずっと報告したかったんだ。やっと僕の夢が叶ったよ」
僕は夢の中の健太にずっとしたかった報告ができた。
夢の中の健太は笑顔で「よかったね」と言ってくれた。
次の健太の一言に僕はハッとした。
「次の夢はあるの?」
健太は僕に次の夢があるか聞いてきた。だが僕の夢は小説家になることそれを夢に頑張ってきていた。
「次の夢考えておくね」
僕は健太に次の夢を考えると伝えた。
でも僕は健太の笑顔が見れたことが本当に嬉しかった。
僕と健太は生きていた頃のようにワイワイ話していた。やっぱり健太と話すのはめちゃくちゃ楽しかった。
だが楽しい時間はあっという間だった。
夢が覚め、僕の目には涙が流れていた。あんなに楽しい時間がもうリアルでは味わえないと思うと悲しくなってきた。
「次の夢かー。確かに夢はあった方が僕はやる気が出るタイプだもんな。僕のこと良くわかってるな健太は」
それから僕は次の夢を考えて見た人に生きる勇気を与えられる小説を書くと言う夢に決めた。
そして書籍化の本の発売日に本を持ち健太のお墓参りに向かった。
今まで健太のお墓参りには行けてなかったので健太のお母さんにお墓の場所を聞きそのメモを見ながらお墓に向かった。
健太のお墓に着いた。そこは見晴らしのいい高台にあってとてもいい景色だった。
「健太と見たかったな」
僕はぽつりと呟いた。
そしてお墓に持ってきた僕の小説を袋に入れて置いた。
「健太のおかげで書籍化できたよ。健太ありがとうね。夢で言われた次の夢考えたよ。僕の小説を見た人に生きる勇気が与えられるような小説家になるよ。健太みたいに自分で命を落とす人が一人でも減るように頑張るよ」
僕は健太のように自殺する人を減らせるように小説を書くことを健太に誓った。
「いい夢だね。匠なら絶対にできるよ」
そんな健太の声が聞こえてきた気がした。
「また報告に来るね。プロの小説家として頑張るね」
僕はそう言い健太のお墓を後にした。
そうだ。まだ僕の人生はまだこれからだ。僕の夢もきっとまだまだ増えていく。夢を叶えれば次の夢ができるきっとその繰り返し。でもそれが生きてるってこと僕は健太の分まで生きる義務があるんだと思う。だから僕はこれからも思いを乗せ小説を書き続ける。それが僕にできることだから。それが僕の夢と健太の願いなんだから。
僕の夢と君の願い アカト @akat19890907
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