今日、僕は死にます
岸亜里沙
今日、僕は死にます
夏休みの研究課題として、僕は壮大なテーマについて実験したいと思います。
『人は自己暗示で死ぬのか』です。
第二次世界大戦中にも似たような人体実験があったそうです。
目隠しをして拘束した囚人の体に、メスで偽りの傷をつけ、恰も血が滴っているかのような音だけを聞かせ続けました。そうしたら、血が出ていないにもかかわらず、その囚人はショック死をしたそうです。
『病は気から』とも昔から言われているようですし、やはり自己暗示は協力な力を持っているのかもしれません。
僕はその力を証明する為に、夏休みが終わるまで日記形式で、ちょこちょこ書いていきたいと思います。
体にどう変化があるのか。
例え僕が死んでも、偉大な実験記録としてこの研究を残してもらえれば幸いです。
【7月29日】
今日から自己暗示をかけていきます。
ただ『僕は死ぬ』と漠然と念じるより、何か病気になるほうが良い気がします。
なので『僕は病気で死ぬ』と思い込む事にします。
【8月1日】
体は健康そのもの。
まだ変化は見受けられません。
しかし僕の体は、得体の知れない病魔に蝕まれているのです。
そう自己暗示をかけていきます。
【8月4日】
だんだんと体に変化が起こり始めました。
食欲が減退してきました。
単なる夏バテとはまた違う感じがします。
【8月9日】
熱が出ました。
風邪なのか。
ただただ息苦しい。
でも自己暗示は続けます。
【8月15日】
病院には行かず、様子を見てます。
熱は微熱になりましたが、体の怠さが尋常じゃありません。
僕はそろそろ死ぬのかもしれません。
【8月17日】
微熱は続いて、内臓にもダメージがきている気がします。
吐血もしました。
だんだんと何も考えられなくなってきました。
【8月24日】
もう病院へ行く事も出来ません。
まるで自分の体ではないみたいです。
鉛のようです。
【8月26日】
もう起き上がる気力さえ無くなりました。
生きているのも辛くなりました。
ああ、僕はバカな事をしてしまった。
【8月29日】
この実験は中止します。
皆様はくれぐれも真似しないでください。
自己暗示は危険です。
【8月31日、遺書】
もう手遅れでした。
僕の体と精神は1ヶ月でボロボロに壊れました。
多分、今日、僕は死にます。
最後に自己暗示をかけたいと思います。
『僕の人生は素晴らしいものだった』と。
今日、僕は死にます 岸亜里沙 @kishiarisa
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