第6話 12の活路

 男たちに囲まれたエレーナとリオーラ。


兎に角ここは力技で抜くしかない。


エレーナはそう考えていた。


(抜け道は……ある! それも12個……兎に角力技で押し切る!!)


エレーナは正面の男に向かって鳩尾に飛び蹴りを放った。


着地と同時に右足に力を入れ、横の男に右オーバーブローを放ち、失神させた。


「チッ……この金髪のガキ、なかなかやるじゃねえか……!!」


エレーナは男たちを尻目にリオーラの左手を引き、人一人分が入れるくらいの路地裏へと逃げ込んだ。


「逃がすな! 追え!! こんな上玉はなかなか手に入らねえんだぞ!!」


男たちも先回りをしてエレーナ達の後を追った。




 逃げるエレーナ達。


エレーナは逃げながら進路を探す。


「ねえ、なんなの、あの人たち!! 捕まえて犯すって言ってたけどさ!!」


「多分買春のか……ただの暴漢どもなのかの2択だけど……おそらく前者。捕まったら嬲られて売られて終わるよ!!」


エレーナは久しぶりの生きるか死ぬかの表情をしていた。


生存本能か、あるいは高揚感なのか。


エレーナはどこか楽しんでいるように見えた。


近くに箱とパイプを見つけたので、一旦隠れて様子を見た。




 喧騒からして、どうやら路地裏から出てくるところを待ち伏せしているようだった。


「リオーラ……外、一回出るよ。」


「ええ!? な、なんで!? 怖いじゃん……!!」


「ちょっとひらめいた。切り抜ける道。」


エレーナは慎重に箱を開け、外に出た。


「リオーラ。乗って。背中に。」


「え? う、うん……。」


言われるがままにリオーラは背におぶさる。


エレーナはパイプを伸ばし、窓の縁に掛ける。


それを梃子の原理で跳ね上がり、エレーナは窓の縁に飛び乗る驚異のバランス感覚を披露する。


エレーナはテンポ良く、その後も窓の縁に飛び乗ってトントンと進んでいく。


そして屋根へと飛び乗った。


しかし、ここで誤算が。


カラスが音で飛び立ったのである。


そしてそれを暴漢達が見逃すはずもなく。


「居たぞ!! 構えろ!!」


エレーナ達が降りてくるタイミングを見計らって構える男たち。


「……ちょっと誤算はあったけど……想定内。ここからなら広く見渡せる。」


「そ、そうだね、確かに……どこか逃げれるところあるかな……?」


「兎に角人目の少ない場所に逃げないといけないけど……そこは読んでるはずだから……!!!」


戸惑うリオーラをよそに、エレーナは男達を空中から襲いかかった。


パイプを振り下ろし、男を一撃でノックダウンさせた。


その後もパイプを剣術のように振り回し、男達を薙ぎ倒していった。


そしてゴミ山の方へと走り出していった。





 ゴミ山は意外とゴミを集める人が朝は多いので、雰囲気がそういう雰囲気に遮られる。


だが、リオーラは初体験なので、悪臭に耐えきれない。


「ウエッ……なに、この臭い……気持ち悪い……」


「仕方ないでしょ、ゴミの塊なんだから……いいから口、押さえてて。」


「う、うん……」


エレーナに言われるがまま、フードで鼻と口を押さえた。


「……エレーナ……なんで私を……? そこまで気を遣うの……??」


「……友達だから……私の……初めての。」


「……ゴメン、私がエレーナの故郷に行きたい、なんて言っちゃったから……」


「……いいよもう……けど……ここ、切り抜けないとどうもならないし……」


ガシャガシャ、という鉄が踏み締められる音が聞こえてくる。


エレーナは野生の勘を働かせて抜け出す決意をした。


「……ちょっと待ってて。来る気がするから。」


エレーナは飛び出して、男達の前に立った。




 思わぬ奇襲を受けた男達は、準備するのが精一杯だった。


「……私の友達に手を出した罪……償ってもらいましょうか!!」


エレーナは思い切りパイプを振り上げ、次々とぶっ倒していく。


しかも当たる場所は


男達はゴミ山の上で気を失って倒れ伏せていった。


「チッ……な、なんなんだよ、このメスガキは……!!」


「……まだやる? アンタ達が私に勝てるとは思わないけど。」


「チクショウ……!! ボスに報告だ!! おそらく中央の奴だって!!」


男達は一目散に逃げ出していったのであった。


エレーナは、リオーラが待っている山の中に戻り、救出した。


そして元々住んでいた場所に案内していったのであった。





 そして、約5分後、エレーナが以前生活していた箱の前へと着いた。


「あ、ありがと、エレーナ……貴女がいなかったら私……私……!!」


「とりあえずよかったよ、無事で……此処で前は生活してた……5歳で独りになってから箱の中に時々入って生活してたからね……」


と、エレーナは箱を開けた。


「い、色んなもの入ってるんだね……すごい、鏡とかも……古いヤツが……」


「全部ゴミ山で拾ったし、生活必需品はここで揃えた。まあ、盗んで取った奴もあるけど……今はリオーラん家でどうにかなってるから、もうこれは要らないかな。」


「そっかー……凄いね、エレーナはやっぱり……憧れちゃうな……」


「そう? 女子はバンテルには向かないでしょ。」


「だってさ? もしウチが没落しても生活できるじゃん、知識さえあったら!!」


「いや、参考ならないって……」


「……あ、そうだ!! これ!! 書こう!?」


と言って、木製の筒と紙とペンを取り出す。


「……なに、それ……」


「タイムカプセルって言うの!! これを数年後に取りに来るって約束事を書いて……保管しておくの!」


「……いいね、やろうか。大魔王が出たって噂立ってるしね。」


というわけで、リオーラとエレーナはタイムカプセルに願い事を書く。


そして筒に入れ、エレーナの住んでいた箱に投げ入れた。


「じゃあ……私たちが大魔王を倒したらさ……また、取りに行こう!?」


「……うん。」


二人はその後は何事もなかったかのように王宮へと戻っていったのであった。


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エレーナは荒野を駆ける 黒崎吏虎 @kuroriko5097

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