ドクダミの根

みちる

紙一重 第1話 

 ピコンッ。スマホの通知が鳴った。「日向ひなたごめん!明日の約束なんだけど、来週でもいい?」そう表示されたのを見て、私は鞄から手帳を引っ張り出す。来週の土曜日は空白だった。本当は明日公開される映画、初日に観たかったけど…仕方ないよね。通知をタップしてトーク画面を開く。


「大丈夫だよ。来週にしよう!何かあった?」


そう打ち込み、送信する。すぐに既読マークが付き、


「うん、今電話できる?」


どうしたんだろう、何かトラブルでもあったのかな。心配になりながら電話のマークを押す。トゥルルルル、トゥルルルル、ピッ。


「…もしもし、由佳ゆか?大丈夫?」

「日向!あのね、あのね、聞いてほしいんだけどね」


スマホ越しに、ごくん、と唾を飲み込む音が聞こえた。


「…実は、田中先輩が明日の映画一緒に観たいって言ってくれて!」

「ええ!そうなの!?」

「日向、二人で行ったらペアグッズもらえるって教えてくれたでしょ?先輩にその事話したら誘ってくれたの!」

「本当に!?絶対先輩由佳のこと好きじゃん!」

「かな?嬉しいよぉ」

「…でもそれなら無理して来週行かなくてもいいよ?」

「ううん。日向とは約束してたしさ、グッズ2種類選べるじゃない?先輩とは別で、日向ともお揃い欲しいし!」

「そう?じゃあ来週行こっか」

「うん!ネタバレも絶対しないからね!」

「ふふっ、絶対しないでよ?とにかく、明日楽しんでね〜」

「ありがとう!また報告する!」


電話が切れると、クマが土下座をしているスタンプとふきだしにありがとうと書かれたスタンプが送られてきた。

良かった、由佳ずっと片思いしてたもんね。明日は付き合った報告を聞けるんだろうなぁ。画面に向かってニコリと笑い、トークアプリを閉じる。


「お姉ちゃん〜!夜ご飯だよ〜!」弟の朝陽あさひが呼んでいる。

「はあーい!今行くー!」


明日ヒマになっちゃったな。ふぅ、と息をついてドアノブに手をかけると、絶妙なバランスでドアの枠に引っかけていた、シワひとつないワンピースがばさっと落ちた。

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ドクダミの根 みちる @chun_florica

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