第1章 第2話 進論のはじまり

いよいよ進級論文の授業が始まった。

今日は説明会で、明日から10日間が調査日になる。


進論は4人1グループとなり、あらかじめ決められた4 km四方の範囲の地質調査を行い、その成果を論文の様にまとめるというものである。


僕のグループは男子2人、女子2人になった。

もう一人の男子は優真ゆうまというやつで、この学科に第一希望で入り、成績が学科内1番という非常に優秀な男だ。個人的にはくえないやつだと思っていて、気に入らない。(まぁただの僻みだろうが。)

女子2人は結菜ゆいなあおいで、一緒にいるのをよく見る元気な女の子達という感じだ。もっとも、あまり女子とは関わりがないのでそれ以上のことはわからないのである。


今日は明日以降の調査をどのように進めていくか、どの沢(地質調査では岩石が露出している可能性が高い、地形的に谷になっている部分を調査していく)を調査するかを計画していく。


あとは、調査の効率化のために露頭(地層や岩石が露出した場所)観察、記録、写真、先頭で歩く人に分担しようと優真が言い始めた。

もちろん、否定する人なんて誰もいない。

私たちは記録、写真を2人でやるねと結菜と葵が口を揃えて言った。

残る役割は露頭観察と先頭で歩くかのどちらかだ。

優秀な優真をさしおいて僕が露頭観察をすると言うなんて、とてもじゃないが言えなかったので、じゃあ優真に露頭観察は任せて、僕は先頭で様子を見ながら歩くね。とやりたくない気持ちが顔に出ないように取り繕って言った。


先頭で歩くのなんか他のどの役割よりも楽そうだと思うかもしれないが、整備された登山道を歩くのとはわけが違う。

沢は雨が降ったときに水が流れるような場所なので常に地面が湿っていて、水になめされた露頭で滑ることだってある。何より倒木や大きな石で塞がれていることもあるのでどのルートで歩いていくのが安全かを考えながら歩かなければならない。


幸いにも僕はアウトドアが好きで、登山やキャンプ、オリエンテーリングをしたりするので地形図の読み方や山の歩き方には自信がある。適任と言えば適任なのかもしれない。



その後の話し合いは優真がみんなの意見をまとめてくれたおかげでスムーズに進んだ。


昼過ぎから行われていた説明会、打ち合わせも夕方には終わり、明日からの調査に備えて早めに解散した。


いよいよ明日から野外での地質踏査が始まる。




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ぼくの不思議な探検記 雲母  @HARU_geo

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