ぼくの不思議な探検記
雲母
第1章 第1話 ありふれた日
頭上で燦々と光る太陽が地上のありとあらゆるものに熱を与えている。
普段ならエアコンが効いている部屋にこもってオンラインゲームに熱中し、生産性のない一日を過ごしていただろう。
だが、このカンカン照りの太陽の下でしか味わえない楽しさがあることを知っている。
僕は今、青々とした針葉樹林に囲まれ、深緑の透き通った川が流れている高原のグランピング施設でサークル同期の男4人でバーベキューをしているのである。
肉が焼けていい匂いがしてきた。
夏季休暇はバイトとオンラインゲームの繰り返しで夏休みらしいことを何もしていなかったので、この非日常感を満喫できてテンションがあがっている。
他愛もない会話をしながら牛肉やスペアリブ、気持ち程度の野菜を焼いていく。
サークルの同期はみな文系で、後期の履修の話やバイトの話、彼女の話で盛り上がっている。
夏季休暇が残り2週間で、そろそろ後期の履修を考える頃合いなので、決して他人事ではないのだが、それ以上に明後日に控えている集中授業のことで頭がいっぱいいっぱいである。
その授業は僕が所属する地球科学科の必修単位であり、進級論文、通称「
「あぁ、、、進論だりぃなぁ・・・」と愚痴をこぼすと
「お前も大変な学科にいるよなー」と十八番の反応が返ってきた。
僕は不本意でこの学科にいるんだよなぁという言葉が心のおくにとどまる。
僕の大学では、大学入試のときに理系・文系それぞれ一括で受験し、1年次には幅広い分野の知識を学び、2年次には物理・化学・生物などの専門分野を選択することになっている。
選択する専門分野は各人の希望が聞かれるが、希望人数が定員を上回れば成績順で選ばれるようになっている。
ぼくは物理学科を志望していたのである。
しかし、地球科学科にいるということは、、
そう、他との競争に負けたのだ。
僕の大学は自分で言うのもなんだが、世間一般では難関大学と言われる大学である。大学入試は狂いそうになるぐらい勉強し、見事に合格を勝ち取った。
田舎出身で、都会の大学に通うことになるので上京した。
上京して周りの誘惑の多さなのか、大学入試時の勉強の反動なのかは分からないが、大学1年次はあまり熱心に勉強をしていなかった。
そのツケが自分に降りかかっているので自業自得以外の何者でもない。
地球科学科は変人学科と揶揄される不人気学科であり、他学科のふるいに落とされた学生の受け皿のような格好になっている。
もちろん、高い志を持ち学んでいる学生もいるが、、、
そんなこんなでダラダラと喋りながら楽しんでいたら日は暮れていて、辺りも静かになり始めた。
今夜は大きなドーム型のテント内に用意されたフカフカなベットで寝るのである。
ベットに飛び込み、仰向けになるとテント天井の一部の透明な部分から満点の星空が見える。
グランピング、めちゃめちゃいいなと、今日一日を振り返りながら眠りにつく。
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