第6話 八極拳の李書文
連維材は陳化成と別れた後、港の倉庫へ向かっていた。途中で1人の男と合流し先を急ぐ。
「俺を呼び出してまで警戒する相手なのかよ。」
「イギリス兵を1人で10数人惨殺する男だよ。警戒し過ぎということはない。」
向かう先には、ジェイムス・マドソンが隠れている。あの殺人鬼。予想以上の厄介者だ。連維材は胸の高まりを隠しきれずに笑っていた。
「いるか、ジェイムス!」
連維材は倉庫を開けてそう叫んだ。ズカズカと奥へと入っていく。
「馬鹿野郎が!」
と、連維材に同行していた男が駆け出した。ドン!と、大きく踏み込み連の前に出た。それと同時に、男の額に銃弾が当たって弾け飛んだ。
「驚いたな。銃弾を生身で弾けるのか。」
そう言って出て来たのは、ジェイムス・マドソン。
「漢語で喋ろよ、南蛮人が!」
「元気そうで何よりだよ、ジェイムス。」
と、連は言った。
「そいつが俺の相棒か?」
「そうなるな。八極拳士の李書文だ。実力は今試した通りだよ。」
李を無視して2人は英語で語り合う。しかし、この男はそれを良しとするほど寛大な精神は持ち合わせていなかった。
李書文はジェイムスに向かって行った。正中線を捉えた李は崩拳を放つ。ジェイムスはそれを左手で受けた。
ズドン!!と轟音が倉庫に響く。ジェイムスは壁まで吹き飛ばされた。八極拳に二撃は必要無い。常に狙うは一撃必殺。鍛え抜かれた筋肉と経による発勁は、たとえ鎧を纏っていようとも相手を穿つ威力を持っていた。
しかし、ジェイムスは立ち上がった。李の
拳が当たる前に自ら後ろに飛んで力を逃していた。それでもこの破壊力にジェイムスは驚きを隠せなかった。
「はじめまして。ジェイムス・マドソンです。漢語でのあいさつはこれであっているかな。」
「話せるなら初めから漢語を話せ。これで銃弾の分は見逃してやる。」
「どういたしまして。」
連維材は2人が拳を交えたのをその目に見て、期待が膨れ上がった。これなら香港を、いやこの国を壊す為の亀裂を入れる事すら可能であろう。連の内側で渦巻く破壊欲求が満たされる日はすぐそこまで迫っていた。
阿片窟 あきかん @Gomibako
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。阿片窟の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます