恐怖!デスゲーム!

春海水亭

密室


A:夜になってしまったのかと思ったが、どうにも違うらしい。

目を覚ました俺は何も見えない暗い部屋の中にいた。

広いのか狭いのかすらわからないが、少なくとも俺の家じゃないことだけは確かだ。

そして、俺が寝てる間にこういうサプライズパーティーを仕掛ける友達は俺にはいない。

というか、根本的に俺に友達はいない。

誘拐とか拉致とか、そんな物騒な言葉が頭の中で騒ぎ始めて、

俺は声を上げた、誰か、誰かいないのか!


B:その声……誰かいるんですか!?

A:よかった……いや、よくないかもしれませんが、

貴方もここに連れてこられたんですか?

B:えっ、はい、目を覚ましたら……ここにいて、

わけがわからなくて、どうしようって思ってたら貴方の声がしたんです。

A:そうですか……クソッ、何がどうなっているんだ

C:クク……目を覚ましたようだな

A:うわっ!なんだ!?

B:眩しい!


C:突然、灯りをつけて失礼……眩しかったかな?

だが、君たちの顔をはっきりと見たかったものでね……

A:だ、誰だお前は!!

C:私のことは……そうだな、ゲームマスターとでも呼んでくれ

B:ゲームマスター……?

C:そう、君たちにちょっとしたゲームで遊んでほしくてね……

そう、命がけのゲームをね……

A:命がけのゲームだと!?

C:クク……これは冗談でもなんでもないよ?

B:そんな、そんなことって……!

A:クソ……いや、待て……!

C:待てと言われても、待ってやることは出来ないよ……?

A:いや、そうじゃなくてさ……お前、近くない?

C:近い……なんのことかな?

A:いや、こういう奴って、主催者はモニター越しに見るもんじゃないのか?

B:そういえば、そうですね。

C:いや……観客席は近いほうが良くないか?

B:確かに……人の死は近いところで見たいですよね

A:こっわ、いや違うんだよ。えっ、デスゲーム的な、そういう殺し合いをさせたいんだろ?

C:まぁ、そうだな

A:なんか、殺し合わないと出れないみたいな……そういう感じなんだろ、この部屋

C:ああ、君たちの内、どちらかが死んだ時点でこの部屋の扉が開く……クク、どちらかが餓死するまで粘ってみるかい?私はそれでもかまわないよ?

A:鍵持ってんの?

C:そりゃ、鍵が無きゃ出入り出来ないからね

B:あぁ……じゃ、つまり

A:俺たちが殺し合いなんかしなくても、お前から鍵を奪えば良いだけなんだが


C:ハァ~ン……フゥ~ン……なるほどぉ……なるほどなぁ

さて、君たちに配るのは5枚のカードだ

A:致命的な脆弱性を指摘されてるのに続けるなよ!

B:何もなかったことにすれば何もなかったことになるわけじゃないんですよ!?

C:ゲームの名は激痛ポーカー!さぁ、自分の命を賭けて愚かに振る舞う様を私に見せてくれたまえ!

A:鏡でも見てろよ!

B:大人しく諦めてくださいよ!激痛こえて痛々しいことになってるんですから!

C:うるさい!やれよ!もう!殺し合えよ!!家売っちまってるんだよこっちは!

A:こういうデスゲームって金持ちが余興でやるもんじゃねぇのかよ!

B:この状況に置かれている私達よりも人生かけてますね……

C:わかるか、私の気持ちが!?妻には逃げられ、仕事はクビになり、何もかも失った私の気持ちが!!は~あ、ムシャクシャする!!デスゲームでもやってスカッとしてぇなぁ!!ってなったんだよ!!

A:なるなよ!!なるにしてもお前の妻とお前の上司に殺し合わせろよ!

B:スカッとしたいには陰湿すぎる……

C:いいから殺し合え!じゃあアレだ!!2万円やる!!財布に残った私の全財産だ!!後はもうこの部屋を借りるのとデスゲーム用殺戮装置を作るのに使ってしまってもう何にも無い!!

A:どこだよ、殺戮装置

B:あ、部屋の隅のアレですかね

C:激痛ポーカーの役に応じて、君たちに様々な激痛を味合わせる恐ろしい機械だ……さぁ、自分の身体を殺戮装置に預けたまえ……生き残った方だけが機械から解放される仕組みだ……

A:そこまで言われて誰が入るんだよ!!

B:っていうか、私達を最初から機械にセットしておけば、良かったんじゃないですか?

C:うるせぇな!!初めてデスゲームやるんだからしょうがねぇだろ!!この経験は次に活かすから、とっととしろ!!

A:お前に次はねぇよ!

C:わ、私をクビにした上司と同じ台詞を吐きやがって!!

B:むしろ、よく最初がありましたね……


C:ウォーッ!!殺し合えよぉ……殺し合ってくれよぉ……もう俺にはデスゲームしか無いんだよ……このデスゲームを成功させて、スカッとした気持ちで人生をやり直したいんだよぉ……

A:なんなんだよ、刑務所からやり直せよ……

B:可哀想になってきました……ねぇ、やってみませんか、デスゲーム

C:本当ですか!?

A:マジで言ってんのか!?

B:この人、本当に哀れですよ……どうでしょう、人助けだと思って、私達殺し合ってみましょうよ

C:ああ!私達も君たちが醜く殺し合う様を見たら、きっと人生をやり直せる気がするよ!

B:ねっ、本人もこう言っていますし、どうでしょう

A:どうでしょうって言われても、どうもしねぇよ……

B:そこをなんとかお願い出来ませんかね

C:私からも頼む……殺し合ってください!!お願いします!!

B:ね、本人もこう言ってるんだから

A:どの立場から物を言ってるんだよ、俺らも本人だからな?

B:でも、こんな哀れな人間のためですから、1回ぐらい良いじゃないですか

A:命に2回目は無いんだよなぁ


C:やはり駄目か……いや、当然だな。仕事も出来ない、妻にも逃げられる、とくれば当然、人の命を奪うことも出来ないわけだ……

A:最後のはむしろ一線を越えられなかったことに感謝しろよクソ野郎が……

B:元気だしてくださいよ、あ、そうだ。機械が駄目なんですよ、機械

C:なに?

B:私達は今自由な分、自分から自由を奪われに機械に入るっていうとっつきづらさが殺し合いの始まらない要因なわけです、やっぱ最初のスタートっていうのはとっつきやすさが大事じゃないですか

C:た、たしかにそうかもしれない

A:殺人のとっつきやすさ、世界で1番聞きたくない話かもしれねぇ

B:だから、近くに……なんか凶器とか無いですかね

C:殺戮装置のナイフが取り外し式になっているが

B:あ、それだ。それでいいです。ちょっと待っててくださいね

こう……私がナイフを一本持つじゃないですか

C:ふむ

A:あ、ちょっと待って聞きたくない。

B:で、今から襲いかかるじゃないですか

A:うわー!!マジじゃん!!マジのやつじゃん!!俺の横をナイフが!!やべぇ!!待って……やっべぇ!!

C:すごい……これが本物の命の奪い合い……!!

A:感動してんじゃねぇ!!

B:で、黙って殺されるわけにはいかないじゃないですか、そこでもう1本武器を用意して、渡してあげる。とりあえず、これなんですよね。

C:おお、すごい殺し合いが発生した!!

A:死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!やめろ!そんないきなりナイフ渡されて使えるわけねぇだろ!

B:まぁ、こんな感じですね

A:ハァ……ハァ……やめてくれてよかった……マジで怖い……

C:感動したよ……人間は簡単に殺し合わせることが出来るんだな

A:お前、マジでふざけんなよ!!

C:グェッ!なんで私を殴るんだ!!殴るなら実際に襲った方だろうが!

A:あの女まだナイフを持ってて怖いんだよ!!っていうか根本的な原因はお前なんだよ!!お前への情とガバガバなデスゲームが殺戮モンスターを生み出したんだろうが!!

B:やめてください、争いは何も生みませんよ

A:や、やめます、やめますんでナイフだけは仕舞っていただけますか

B:失礼しました、でどうでしょうかゲームマスターさん

C:いや、本当に良いものを見せてもらった。しかし、私は殺し合いには、こう心理戦とか頭脳戦も期待しているので、本当に申し訳ないが、こういう古代ローマの闘技場的なものはどうもな……

B:困りましたね

A:ふざけんなという気持ちが無限に込み上がってくるな……

B:しかし、最初のスタートが完全に失敗している以上、もうあの装置を利用した、えーっと、なんでしたっけ

C:激痛ポーカー

B:そう、激痛ポーカーの利用は無理でしょうね

C:そこをなんとかならないだろうか

A:なんとかなるわけねぇだろ!!

B:殺し合うことにメリットが無いんですよね

C:2万円でなんとかならないか?

A:それで殺し合うなら、俺が2万でお前らを殺し合わせるからな……

B:まぁ、というわけで2万円じゃ足りません、人を殺し合わせるなら1千万ぐらいは欲しいところですね

C:金のために人間が殺し合うか……そっちの方が醜くてスカッとしそうでいいな

A:マジで今のお前が一番醜いからな?

B:というわけで、どうでしょう。人生をやり直して、まずはデスゲームの賞金1千万を用意するところから始めてみませんか?

C:そうだな、人間同士を殺し合わせるために、もう一度やり直してみるか……

A:これほど応援出来ねぇやり直し発言はじめてだ

C:本当にありがとう、君たちには大変に世話になった……

B:何を言ってるんですか、私達デスゲームで結ばれた仲間同士じゃないですか

C:ありがとう……ありがとう……

A:こういうの参加者同士の言葉であって、参加者と主催者の言葉じゃないんだよなぁ

C:第一回のデスゲームは誰も死なずに終わった、だが良かった……人の死よりも大事なものを私達は得たんだ……

A:何もいい話じゃねぇからな!?


A:こうして俺たちはデスゲームを無事に生き残り、帰宅した。警察に通報しようとしたが、あの女が怖すぎてやめた。そして一週間の時が過ぎた


A:暗っ……!もしかして……!?

B:貴方もここに連れてこられたんですか!?

A:うわ……ということは!!


C:クク……ようこそ、君たち。記念すべき第二回……いや新なる始まりのゲームということで、君たちを招かせてもらったよ

B:立ち直ったんですね!?

A:同じ人間を2回も攫うの人間としては底辺以下だと思うが


C:クク……賞金は1千万円……さぁ、死のゲームの始まりだ……と言いたいところだが

A:は?

B:どうかしたんですか?


C:賞金を用意するために機械を売ってしまった……一体、どうすればいいんだろうな

A:遊んでねぇで働けよ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恐怖!デスゲーム! 春海水亭 @teasugar3g

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ