煙草

鈴ノ木 鈴ノ子

煙草

たばこ


お気にいりのシガレットケースからタバコを一本取り出した。


葉に巻かれた白い紙


錦糸のような銘柄の刺繍


純白の硬いフィルター


夕日に照らされて、夕焼け色に染まる。


今日はいいことあったかな、嫌なことだらけだったかな。


でも、全ては時間の彼方に消えさった。


後味の悪い思いも、


苦い記憶も、


たゆたう思いも、


全ては終わったこと。


慣れ親しんだ相棒を取り出して、素敵な音を奏でる蓋をそっと開いて火をつける。


夕日色にゆらめく火は、まるで灯明のようにゆらりとゆれる。


口元に咥えたタバコに近づけて、その灯でそっと火をうつす。


吸い込んだ煙をゆっくり吐くと、あたりに薄白い霧が立つ。


それは至高の一服、


それは思考の一服、


それは志向の一服、


今日の反省と明日への活力。


漂う煙がゆらゆらと、私の体を渦巻いて、夕焼け空へと昇ってく。


風に消えてく煙達、不貞腐れた私も一緒に消えていく。

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煙草 鈴ノ木 鈴ノ子 @suzunokisuzunoki

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