第139話バべルの塔での選択




バべルの塔には、でかい門が待ち構えていた。

この門を俺1人で開けるのか?


頭の位置に丸い取っ手があり、両手で掴んで引張ってみた。

最初は重かったが、動きはじめるとゆっくりだが開きはじめた。



中の様子は、霧がかかったように見えない。

何も恐怖も感じないまま入ってしまう。


入った瞬間から、「ガシャン」と後方で門が閉じている。

そこで、俺はようやく気付いた。

何故、従魔らを連れてこなかったのか?


俺は操られていたのか?




『よくきたな、新たな挑戦者よ』


何かが心の奥底から、響いて聴こえてくる。


「俺に、何が望みだ」


『お前に、全能な力を授ける機会を与えよう』


「全能な力とは、何ですか?」


『この世界を支配する力と言えば、分かるだろう』



その瞬間に、様々な記憶の映像を観ていた。


遠いいにしえの映像で、同じように1人のトカゲ人間に同じ言葉を聴かされていた。

頭が大きく、尾は退化したのか見えない。まさに知能が高いトカゲ人間。


そして、そのトカゲ人間が恐竜を殺し尽くす映像が、延々に観る羽目になった。



次の映像には、猿人に似た者に同じような言葉を聴かされていた。


この映像は何なのだ・・・



そして、我に返った。




『我の力が欲しければ、従魔を生贄に差出せ』


何故、従魔なのだ・・・差出したら従魔が消滅するイメージしか観えなかった。


「俺は従魔を差出す事は出来ない」


『ならば、立ち去れ。お前もそれを選んだのか・・・』




あれ!我が家に戻っていた。


『親分、おかえり』


「どうしたの・・・」


瞳が不思議そうに、俺を見ている。

あれは、夢なのか?


『親分、どうした』


『何かあった・・・』


俺はしばらく立ち尽くしていた。



「あら、外が騒がしいわ」


俺も、ようやく考えることをやめて、外に出てみた。

丁度、鈴木課長が走っていた。


「鈴木課長、何かありましたか?」


「ああ、青柳くん、大変な事が起きた。ダンジョンが消滅したんだよ。ダンジョンに居た人は、勝手に地上に戻されて無事だったみたいだが、これからどうなるのか心配だよ」


それだけ言い残して、走り去ってゆく。

鈴木課長も大変だ。



これは、俺がバべルの塔で選んだ結果なのか?


家に戻り、先程の話を瞳にも話した。

瞳も驚いて、従魔がDVDを見ている最中に「ごめんね」と言って、地デジに切り替えた。


「大変な事になりました。日本以外でもダンジョンが消滅した事実が確認されました。これから、日本政府は緊急記者会見をするそうです。佐々木さんはどう思われますか?」


「まず考えられるのは、魔石の値段が高くなるでしょう。ダンジョン産は要注意です」


俺も、【黒空間】からメタルⅢカード1枚を取り出した。

「ゴト」、あれ!念じる前に具現化して床に落ちた。

インゴットを持ち上げて、カードに戻れと念じても戻らない。


あれ、ステータス画面も表示しない。


俺が思うに、恐竜が滅んだのは、力を選んだ結果だと思う。

もしかしたらダンジョンは、魔王を選択する儀式で人類の生死を選択する儀式でもあったのかも・・・・・・



あれから1年が経過した。

ギルドは、既に解散させられたが、ジバは国連の管轄で国際犯罪取り締まり組織が正式に決まった。

何故なら、支援スキルのみが、今でも使えたことが原因であった。

より巧妙な犯罪は、同じようなスキル持ちが係わらないと、さがせないからだった。



今でも我が家では、従魔が気まま暮らし、赤ん坊の面倒も見てくれている。


『おいらの体を揉んでも、吸っても出ないよ』


今も、赤ん坊は従魔相手に抱きつきじゃれている。

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ハズレだったカードマスターで這い上がる @katuniro

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