幸福の瞬間
多賀 夢(元・みきてぃ)
幸福の瞬間
上司が結婚するらしい。しかも相手は13も下で、若くてかわいい女の子だ。おめでとうございますと言いながら、現実味はなかった。
その日何故か、その嫁(仮)がランチミーティングに来た。第一印象は「どこにでもいるキャリアウーマン」。すみっこで大人しく和昼膳を食べている。なんなんだろう、と思った。なぜ上司は彼女を庇わないのかと思った。
だけどランチが終わった別れ際、彼女が上司にこう言ったのだ。
「じゃ、ガムテープは買っておくから」
「うん。よろしくね」
いつも、誰に対しても敬語の上司が、初心な中学生のように返事をしている。彼女も学祭の準備みたいに、楽しそうに雑用を引き受けている。
ああ。素になれる人を見つけたんだ。
この瞬間、2人は青春を生きているんだ。
魂がカチっと噛み合うのを見た。
よい伴侶同士だと、腕組みしながら眺めた。
組んだ腕を解けなかったのは、男勝りな私には手に入らないから。斜に見なきゃやってらんないから。
どうか2人が、より多くの人に支えられつつ、幸福の瞬間を積み上げていけますように。
……さてと。安いお祝い品、探さなくちゃね。
幸福の瞬間 多賀 夢(元・みきてぃ) @Nico_kusunoki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます