俺が絶対守るから

「はぁ、まさか優斗さんが家事を全くできないとは..」

エマはため息をつき、肩を落とした。

俺とエマは中野家に入った後、「守り屋」から来た本人であるかの確認をし、

俺はエマから仕事内容を丁寧に教えてもらったのだが、皿を運ぶと割るはトイレ掃除をするとつまらせるは、ひらりの部屋のベッドメイキングをしたらひらりに死ねと言われるはで、まともにできることと言えば料理くらいしか残らなかったのだが、

料理は三姉妹がいつもやるとのことで、現段階で俺のできる仕事はなくなってしまった。

結局色々教えてもらったが何も得られるものはなく、強いて言うなら結月さんと名前で呼び合う程には仲が良くなっただけで、時間だけが過ぎて外は真っ暗になっている

「まあいいです。この家の家事は私一人でもできるので」

「なら他に俺にできることはないか?」

せめて何か一つでも手伝はなくてはと思いそう聞くと、

「あ、ならおつかいに行ってきてください」

そう言うとエマはメイド服のポケットから一枚の折られた紙を俺に渡した。

「おつかい?えーっと、ここに書いてあるものを買ってくればいいんだな?」

「はい。お願いします」

「わかった。任せろ!」

紙には『卵 2パック』『サラダ油』『玉ねぎ三玉』と、書かれていた。

すべてスーパーで買えるものなので、早速出かけようと思い、螺旋状になっている階段を降りると、私服姿のひらりと玄関の前で出くわした。

「あんたまだいたの?てか、なんでまだ制服着てんのよ」

「ん?ああ、俺は制服以外服を持ってないからな!」

「は?ドヤ顔で言うことじゃないから」

...ここでうまく働けるかは、ひらりに好かれるかどうかにかかってるな...

「そうだ、あんたまだ時間あるなら家でご飯食べていったら?今日私が作ったんだけど、作りすぎちゃったから、特別に食べさせてあげる」

...こいつが、俺に、料理を...?

「どういう風の吹き回しだ?さてはお前、料理に毒でも入れて俺を殺す気だな?」

「本当に作りすぎただけよ!まあ、食べたくないなら別にいいけど」

...こいつを信用していいのだろうか..。しかし、まずは俺からひらりのことを信じてやらないと何も始まらないか..。

「わかった、ありがたくいただくよ。何時頃に食べるんだ?今から近くのスーパーに行くんだが」

「そうね、紗季が帰ってくる時間にもよるけど、20時ごろにここにいてくれればいいわ」

「わかった」

俺は軽く相槌を打ち、エマからもらったお金をポケットにしまって、靴を履いて外に出た。

「おぉ、さぶい」

外に出ると、冬の寒さにからだがひんやりと冷えていき、体を擦りながら路地を歩く。外はもう真っ暗で、自分の足音がコツ、コツ、と道に響くほど辺りは静かだった



紗季☆


「ありがとうございました!さよなら~...」

...今日も一日頑張ったー!

芸能活動は大変だけど、それに勝るほど楽しい。

事務所のビルから出ると外は黒色に塗られていた。

スマホで時間を確認すると、19時24分と表示されている。

「さむい...」

冬の冷たい空気に体温が奪われていく。

さっさと帰って温かい部屋で温かいごはんを食べたいと思い、少し早足で駅に向かった。



「ふっふーん。らーらりっら〜」

家から最寄り駅の駅でおり、まるで地球から人がいなくなってしまったのではと思うほど静かな帰路を、鼻歌を歌いながら歩いていく。

道はポツポツとおいてある電灯いがい明かりがなく、少し怖い。

「ふふふーん。タラッタッ、ん!ん!んん〜!」

軽い足取りで歩いていたら、急に後ろから口に手を押さえつけられた。

...なに!?...

「騒ぐなバカが!こっちにこい、っ、大人しくしろ!」

男は片手で紗季の体を撫で回した。

...いや...!いや!..離して!



零優斗☆

「おぉさむい!へっくしょい!」

もっと厚着で来ればよかった。

道はポツポツとおいてある電灯以外明かりがなく、周りが薄暗いため気持ちまで寒くなってくる。

トボトボと道を歩いていると、ガタイのいいおっさんが少女らしき人の口を抑えて人気のない路地に引きずっているのが見えた。

「んな!」

思考よりも早く体が動き、気づけば駆け出していた。

「なにしてんだ!離.....!さ、き?」

口を押さえつけられている少女は紗季だった。

目尻に涙をうかべて、声にならない声で叫んでいる。

「ちっ!近づくんじゃねえ!こいつが、こいつがどうなっても知らねえぞ!」

断末魔のように叫んだ男は、刃物を紗季の頬に突きつけている。

「ん!んんー」

...どうする!落ち着け、落ち着くんだ。俺はプロの守り屋だ。ナイフ、ガタイは良い。力は強いだろう。拳で行くのはなし。人質が一人。周りは暗い。助けを呼ぶのは論外。武器は一つ。なら...........

「どっかいけ!邪魔なんだよ!」

「汚ぇ手をどけろゴミ!」

俺はブレザーを勢いよく上に投げ、バッ!っと瞬時によつん這いになり、風の速さで暗闇に溶け、ボールペンの芯を出し親指でペンのお尻を固定し、男の背後に回って、男の首に全体重をかけてペンをぶっ刺した。

ペンはかなり深く刺さり、男は

「いっでえぇぇ!」

と、叫び両手で首を押さえた。

手が紗季から離れた空きに、十字固めをし、ナイフを手からどけて男を動けなくした。

「やめろ!離れろ!殺すぞ!殺すぞ殺すぞ!」

「うるせえ。近所迷惑だから静かにしろ」

俺はポケットから携帯を出し、警察ではなくエマを呼んだ

「悪い、問題が発生した。位置情報送るから、こっちに来てくれ」

『わかりました。おつかいは私がやりますから、あとは任せてください」

「ありがとう」

俺は常に常備している手錠を男にかけ、「田中」と書かれたネームプレートの家の庭に投げ捨てた。

...田中さん、すまん。

あっけに取られている様子の紗季に駆け寄る。

「大丈夫か?怪我は?」

「大丈夫。ありがとう、優斗。本当に、ありがとう...」

紗季はまだ涙の浮かんでいる目を細め、泣きそうなかすれた声でそう言った。

「お礼なんて別にいい。それよりこれにこりて、あんまり夜遅くまで外ほっつき歩くのはやめとけよ」

こんな人気のない路地を、女子高生が夜一人で歩くのには危険すぎる。

「うん。ありがと..ありが...とう..」

紗季は安心したのか、涙を流した。

「はいはい。立てるか?家に帰ってあったまろうぜ。おおさぶ!」

「うん」

紗季は俺の伸ばした手をとり、ゆっくりと立ち上がった。

握った紗季の手は、冬のひんやりとした空気とは反対に、暖かかった。









お読みくださりありがとうございます!

直したほうがいい点等ありましたら、教えていただけると幸いです。

デワマタ?




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年頃女子高生の護衛は厄災級 @takenori11

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