04
朝。
霧はない。真っ直ぐな陽光が、左側から射し込んでくる。
歩いても、何かが見つかるわけではない。分かっているけど、こうやって歩いてしまう。
あなたを探している。あなたが誰なのかも、分からないまま。ひとつだけ分かるのは、あなたはここにいないということ。自分は生きている。だから、あなたはいない。あなたには、こうやって歩いている限り、ぜったいに逢えない。わかっている。
それでも、歩くしかない。徒労だけど。他に何も持ち合わせていないから。散歩するしかない。
自分の存在は、なんなのだろうかと、ときどき思う。あなたに逢いたくて、こうやって早朝に歩いている。逢えるはずもないのに。
ここにあなたはいない。
現在にも、過去にも、未来にも。あなたはいない。
ここではない、別などこか、自分が把握できないどこかにあなたはいる。そして、感じることはできるけど、逢うことはできない。
少し疲れてきた。
帰ろうかな。
眠れば、また。あなたに逢えるだろうか。
夢と幻想 朝方の霧 春嵐 @aiot3110
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