再読。『アンタが言うなよ』と作者様にメタ的で正当なる指摘の二三を入れたくなる怪異発生経緯の滑り出しから、軽妙な筆致で展開されていく殺戮オランウータンによる密室殺人の様相とそれに対する推理劇。題材が題材なだけに模倣犯罪物としても変わり種な読み味になっているのがそれなりに好みで、そうした点がオカルトを基調としたミステリとして確固たる個性として結実している印象。犯人の正体は推理編で分かるものの真相の次第は不明という構成の塩梅も良いし、一味効かせてくる結末と〆文句となる一行が物語を華麗に結ぶ。他の殺オラノベルに対して二万文字とやや長めではあるが、淀みなく読者にそれだけの物語を読ませるに足るキャラクターとミステリーは十全に整っており、ジャンルミステリーとして至極の出来と言えるだろう。