意図的な日記

常陸乃ひかる

干支的な日記

 こないだ、有名な千葉県のテーマパークに遊びに行った。

 そこでなんと、世界を牛耳ぎゅうじると噂される、げっるいにハグしてもらったのだ。アトラクションの楽しさもさることながら、リゾート内のレストランで頂いたビーフシチューは、あごが落ちそうなほどの味わいだった。

 次の週は、野球の試合を見に行く約束があった。応援していたチームは、黒と黄色の縞柄チームに負けてしまったが、臨場感あふれる試合を生で見られて、とても満足だった。

 休日から平日に戻る陰鬱は、なかなか耐え難いものだ。しかし、そんなストレスを紛らわしてくれるのは、家で飼っているロップイヤーである。触るだけで顔がにやけている自分に、少し気持ち悪さを覚えるが。

 もうひとつの気分転換は、先ごろ始めたカードゲームのデッキ調整だ。自分好みのドラゴンを駆使し、最近は友人に連勝していることもあり、余計に作業が捗ってしまう。とはいえ、これ以上デッキを改変するのは蛇足か。

 カードから手を離すと、ちょうどメールが届いた。噂をすれば、その連敗続きの友人からである。

馬単うまたんキター! 今度メシ奢ってあげるわ!』

 どうやらカードではなく競馬で勝ったようだ。少し贅沢をすればなくなってしまうあぶく銭だというが。そんな気前の良い友人に奢ってもらったジンギスカンは、とても乙だった。

 そのうち年末が訪れ、姉夫妻と姪っ子が実家にやってきた。やんちゃすぎる姪っ子に、俺は本棚から引っ張り出した絵本――果物から生まれた剣士が、お猿、きじ、ワンコを従え、鬼たちと激闘する物語を読んであげたが、あまり好評ではなかった。そしてすぐに姪っ子は、ばたばたと家ではしゃぎ始めてしまう。

 俺もインドアな趣味ばかり持たず、姪っ子を見習ってアクティブに、そして猪突猛進気味に生きてみるのも悪くないかもしれない。


 そんな一年の総合的な日記を書いたのが本日――大晦日だった。

 干支はもうすぐネズミに戻るわけだが、来年からは、こんな無意味な日記を書くのをやめようかと、つくづく思った。

「俺には、面白い文字なんて書けっこないもんな……」


                                   了

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