第15話.従者の選択
フレイアと別れ、部屋に入った刹那は少しだけ驚いていた。
「ある程度予想はしていたが、寮っていうレベルではなくね?」
そう。設備などが数多く一部屋に揃っているのは知っていたが、それにしても広い。このような部屋普通に借りるとしてもいくらになるのかわからないのだ。
「まあ別にいいか」
そう呟くと刹那はベッドの方へと近づき、寝転がった。
「今日は色々あって疲れた。普通に戦うよりもこういう日常の方が疲れるな」
その言葉を最後に刹那の意識は遠のいていった。
一時間後に刹那は目を覚ました。
時計を見るとちょうど6時を指していたのであと30分もすれば食堂に集まる時間になる。
「とりあえずシャワーでも浴びて着替えるか」
この寮には備え付けの着替えも準備されていて、服を買うまではそれを使用することができるため、困ることはない。
そしてシャワーを浴びて着替えた刹那は食堂へと向かうため、自室のドアを開けて外に出た。
すると、そこにはちょうど同じタイミングで外に出てきたフレイアの姿があった。フレイアもこちらに気づき、近寄ってきた。
「あら、あなたも今から食堂に?」
「ああ、もう今は6時20分だからなちょうどいい時間だ」
「そうね。私もそう思って今出てきたところよ。ところで部屋の中にあった従者選択の紙は読んだ?」
「ああ、部屋にあった書類か一応一通りは目を通しておいたぞ」
「どの従者を選ぶのか決めたの?」
「まあな」
そんな会話をしながら2人は魔力エレベーターへと乗り込んだ。
そして、2人が食堂に行くと、
「おい、貴様は時間に余裕を持つということができんのか?」
と、坂本隆二がまたも突っかかってきた。確かに隆二の言う通り、テーブルにはフレイアと刹那以外の全員が座っている。
「時間に遅れたわけでもないだろ。いちいちうるさい。」
しかし、刹那はいつも通り隆二に興味がない様にあしらう。その態度が気に入らないのか、隆二も刹那につかみかからんばかりの勢いで
「なんだその態度は!たかがまぐれで首席になったぐらいで!」
そう捲し立てた。
だが、刹那はその言葉にフッと笑い、
「ごめんな。3席様」
と煽る様に言った。
「貴様!」
隆二がついに刹那に掴みかかろうとした時、
「いい加減にしなさい。ここは食事の場よ。」
と、フレイアが2人を止めた。それにより、隆二はいまだに興奮していたが、刹那は興味を無くしたかのように自分の席についた。そして、フレイアと納得の行っていない様子の隆二が席に着くと
「少し早いですが、全員揃った様ですので、食事を始めましょう」
と、セバスがそう言い、食堂へと入ってきた。
そして、メイドたちが料理をそれぞれに料理を運んできて、食事が始まった。
そして、Sクラスの面々が大体食事を食べ終わると、
「ではみなさま、これからみなさまのそば付きになる従者を選択していただきます。お部屋にご用意した資料にて、ある程度どの従者にするか決めておりますでしょう。まずは刹那様、従者をお二人お選び下さい。」
「ああ、それじゃあ、アリス・イージスとアリサ・イージスで頼む」
「んな!?」
とまたも隆二が声を上げた。
「その2人は僕が狙っていた者たちだ!お前は他を選べ!」
「はあ。そこまで行くとお前、相当残念だな」
と隆二に対して吐き捨てた。
「なんだと!貴様!」
そして隆二が刹那に掴みかかろうとしたのだが、またもフレイアが
「いい加減にしなさい。坂本君、好きな従者を選択できるのは序列が上のものの特権よ。あなたは文句を言えないわ。」
「し、しかし!」
今だにそう食い下がる隆二をフレイアは睨みつける。すると
「わ、わかりました」
と引き下がった。やはり、隆二はフレイアには逆らえないらしい。刹那はフレイアを少し不思議そうに見ていたが、やがてどうでもいいかの様に視線を外した。
ちょうど隆二が収まったタイミングでセバスが
「それでは先ほどの2人でよろしいですかな?」
と刹那に聞いてきたので、
「ああ、頼む」
と短く答えた。
「それでは少々お待ちを」
とセバスが食堂の奥に消えていくと、金髪のメイドと銀髪のメイドがやってきた。金髪のメイドが、
「アリサです」
そういうと、銀髪のメイドが
「アリスです」
そう言い自己紹介してきた。
そして、
「「ご指名ありがとうございます。これからよろしくお願いいたします」」
と、声をそろえて言ってきた。
「ああ、これからよろしく」
刹那はそう短く答え、セバスの方へ視線を向ける。
「それでは、従者契約を...」
そうセバスが言いかけたのに対し、
「いや、いらない」
刹那はそう一蹴した。
「し、しかし...」
セバスがそう狼狽えているのに対し、刹那はさも当然と言うように
「俺は誰かを縛ると言うのは好きじゃない。裏切りたくなったら裏切ればいいさ」
と言い放った。従者契約とは主人に対し、反発の心を抱くと全身に死んだほうがマシと言う様な激痛が走るいわば呪いの様なものだ。
それをいらないと言ったことに対し、アリスとアリサですらも驚いている。
そんな食堂にいる全員が驚愕している中でも刹那はお構いなしにセバスにこう言い放った。
「従者の選択が終わったし、もう部屋に戻ってもいいか?色々と決めたいこともあるし」
「で、ですが他の従者の選択は...」
「興味ない」
とこんな様に刹那は取り付く島もない。
「そ、そうですか。ええ、構いませんよ」
「ああ、じゃあ行かせてもらう」
そう刹那はいい、従者の2人を連れて、食堂を出て行った。
『最強』とは最も退屈なもののことである NASKA @NASKA0611
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