第14話.忠告と学生寮

ミーアとの決闘の話し合いが終わりさっさと廊下に出た刹那は寮に向かっていた。

すると後ろから

「ちょっと待って」

とフレイアが刹那のことを追いかけてきていた。

「どうした?フレイア」

「どうしたじゃないわよ!姉様とあんな約束をするなんて何を考えているの?!」

「俺は生徒会なんて面倒なものに入りたくはないんでね」

「姉様と戦うぐらいなら生徒会に入った方がマシなはずよ!」

「へえ?」

そこで初めて刹那はミーアに少し興味を持つ。


「姉様は私の国のフレイム王国で誰1人姉様に傷一つつけることなく軍隊を制圧したり、ヒナギク様との模擬戦等でも圧倒的な勝利を収めた方なのよ?!」

『えー。この国最強とか呼ばれてるヒナギク弱くね?』

場違いにも刹那はそんなことを考えていたのだが、刹那が沈黙しているのを見てフレイアは何を思ったのか

「今ならまだ間に合うから、一緒に生徒会室へ行って決闘を取り下げてもらいましょう。生徒会に入ることになるとは思うけどきっと...」

「いや?決闘は取り下げないぞ?」

「へ?」

今度はフレイアが唖然としてしまう。

「今の話を聞いてどのぐらい強いのか見てみたくなったしな」

「あなた、馬鹿なの?いくら身体的外傷がないとはいえ、苦痛はあるのよ?」

「ああ、わかってるさ。まあどうせ俺が勝つから関係ないけどな」

「だから!それは絶対無理だって言ってんの!」

「まあまあ見に来てみろよ。面白いものが見れるかもよ?」

「面白いもの?」

「ああ。その時になればわかるさ」

「全く姉様は雷属性の魔法しか使えないとはいえ、練度は相当のものなんだからね!」

「ああ、わかってる」

「全くもう...」

フレイアは刹那に呆れたのかこれ以上何かを言う気はないようだ。


「それより、一緒に学生寮の方に行ってみないか?クラスごとってことは同じ寮だろ?」

「決闘のことをそれよりって...まあいいわ。行ってみましょうか」

「おお」

その刹那の返事と共に彼らはSクラスの学生寮へと移動し始めた。


刹那とフレイアはとある建物を見上げて固まっていた。

そうSクラス寮である。

「おい、この建物校舎ひとつよりデカくね?」

「ええ、そうね」

「こんなデカくする必要あったのか?逆に不便だと思うんだが」

「おそらく他のクラスの生徒にSクラスとの差を見せるためだと思うわ。あとSクラスに入りたいっていう意欲向上のためかしらね。」

「こんなところに住みたいって思うやつの気がしれないな」

「ええ、まったくね」

そんな会話をしながら刹那たちは寮内へと入った。

すると、

「おかえりなさいませ。宮本刹那様、フレイア・フレイム様」

執事のような人とメイドたち総勢20人ぐらいで出迎えてくれた。

「えっと、あなたたちは?」

流石のフレイアもこれは予想してなかったみたいで、困惑している。

「私は執事長のセバスと申します。そして私やこのものたちはこれからこの量でみなさまの世話係をさせていただきます」

その言葉とともに世話係の人たちは一斉に頭を下げてくる。

「ああ。よろしく頼む」

「よ、よろしくね」

と刹那はいつもと変わらず、フレイアは少し言葉に詰まりながら返答する。

「その様子ですとこの寮のルールはまだ知らないようでございますね」

「ええ、まだ知らな...」

とフレイアが言おうとしたところで刹那が言葉を遮る。

「いや、ある程度は知ってるぞ?」

フレイアが横目で何かを訴えている。

「まあこの端末にほとんどのことは書いてあったからなもうこの端末で得られるすべての情報は頭に入っている」

するとセバスは感心したように刹那をみる。

「ほう。さすがですな。刹那様」

「このぐらい普通だろう」

と刹那はなんでもないように言ってのける。

「ところで、フレイア様が置いて行かれているようですが」

そこで刹那はフレイアが困惑の目で刹那を見ていることに気づいた。

「どうした?」

「どうしたじゃないわよ!あの短時間でどうやってすべての情報を記憶したの!?」

「ああ、なんだそんなことか。俺は一回見聞きしたことは絶対に忘れないんだ。ただそれだけだ」

「絶対記憶能力ってこと?」

「ああ、似たようなもんだ」

「何よ。煮え切らないわね」

「まあ少し違うからな。」

「ああそう。もういいわ」

フレイアは疲れたように刹那に返す。

会話に一区切りついたところでセバスが

「それではせっかくですので、この寮の説明を刹那様がフレイア様にされては?」

と提案してきた。会話に区切りがつくまでしっかりと待機するのは従者の基本となっている。


「ああ、そうだな。どこかゆっくりできるところはあるか?」

「はい。隣の部屋にロビーがございますのでそちらでどうでしょうか」

「ああそこでいい。俺の説明で補足などがあれば頼みたいからセバスたちもきてくれ」

「ええ、もちろんでございます」

そういうとセバスは1人のメイドに目で合図を送ったかと思うとそのメイドは別の部屋へと入っていった。

「ではこちらです。案内いたします」

「ああ。頼む」

そう言うと刹那たちは数人のメイドを玄関に残し、ロビーへと行くのだった。


「それじゃあ早速説明を開始するぞ」

ロビーの椅子に座ると早々に刹那がそう切り出した。

「ええ、お願い」

その刹那の言葉にフレイアも返答をする。

「まずこの寮は7階建てで2階以降が俺たち学生の部屋となっている。一つの階に部屋は二つとなっているらしい」

「なるほど。一階は?」

「一階にはこのロビーとエントランスそれから厨房に食堂があるな」

「ちなみに執事室も一階にございます」

「ああ、ありがとう」

「いえ」

セバスはよくできた執事だ。余計なことは言わずに必要なことだけを伝えてくる。

「そして先程従者が多くいたと思うが、彼らは俺とフレイアには2人ずつ、その他のSクラスの面々には1人ずつそば付きとして与えられるらしい。」

「なるほどね。道理で人が多いわけだわ。」

「そう言うことだな。そして外から見た通り、この建物は一つの階層ごとにとても大きく造られている。そして一つの階に2人分の部屋しかないと言うことは中がそれぞれが大きく造られていると言うことだ」

「なるほどね。どんな構造になっているのかもわかってるの?」

「ああ、もちろんだ。まあもうすぐ部屋に行くから行けばわかるんだけどな」

「まあそれでも一応聞いておくわ」

「少しよろしいでしょうか?」

そこで今まで黙って聞いていたセバスが会話に入ってきた。

「どうした?」

「いえ、紅茶とケーキの用意ができましたのでよろしければと」

「おお、せっかくだからもらおうかな」

「ええ、そうね。」

そして刹那は紅茶を一口飲んで喉を潤すと説明の続きを開始した。

「それじゃあ続きを言っていくぞ。」

「ええ、お願い」

「まず俺らの部屋は序列ごとに大きさが異なるらしいんだが、それぞれ部屋の数や構造は同じらしい」

「なるほど?」

「全部で5部屋だな。寝室、バスルーム、トイレ、リビング、従者室。となっている」

「従者室もあるの?」

「まあ俺らのそば付きをしてくれるわけだから近くにいた方が色々とやりやすいのだろう。」

「なるほどね」

「ああ、そうだセバス」

そこで刹那は今まで黙っていたセバスに話を振る。

「はい。なんでしょう」

「従者というのはもう割り振りが終わっているのか?」

「いえ、序列が高い方から従者にしたい方を選んでいただく決まりとなっております」

「ふむなるほど。ありがとう」

「いえ」

そういうとセバスはまた下がる。

「じゃあ次に行くぞ。と言ってももうほとんど説明はないんだがな。この量に門限など縛る決まりはないらしい。したの方のクラスになると少しずつ増えていくらしいんだが俺らにはない」

「へえ。それだけ信頼されているってこと?」

「まあ信頼っていうよりこの学校は力こそすべてだ。今の段階で力が強い俺らは何をしてもいいってことだろう」

「なるほどね。えっと、セバスさん?何か補足などはある?」

「セバスと呼んでくれて構いませんよ。私は従者ですので」

「じゃあセバス補足はあるかしら?」

「いえ。完璧な説明でした。それではそれでは寮の説明では無いのですが一つだけ。Sクラスは他のクラスよりも決闘を申し込まれる回数が極端に多いため、専用の修練場が隣にございます。そちらは許可など一切取らずに使用することが可能なので、どうぞご利用ください」

「ああ。わかった」

「では一度部屋に戻られてはいかがでしょうか。また夕食の時間にお迎えにあがります。その時にそば付きを決めていただくことになります」

「ああ、わかった。」

「ええ、そうね」

2人はそういうと紅茶を飲み干し、ソファーから腰を上げた。

「お二人の部屋は7階でございますね。上に上がるためには奥にある魔法陣の上に立ってください。あれには風魔法が込めてあり、心の中で念じるとその階に上がることが可能です。お部屋に入る際にはお二人の魔力を登録してありますので。それぞれの部屋のドアノブに魔力を込めることで開けることが可能です。ちなみに他の方の部屋のドアノブに魔力を流してしまうと警報音が鳴り響いてしまうのでご注意を」

「ああ。ありがとう」

そういうと刹那とフレイアは風魔法陣で7階へと上がった。

「これは便利ね。」

「そうだな。まあ自分で飛んでもいいけどな」

「あなたは風邪魔法を使えるの?」

「さあどうだかね?」

「全く釣れないのね?」

そんな会話をしながらそれぞれの部屋の前に行きお互いに魔力を流す。

「それじゃあまた後でな」

「ええ、また後で」

そう言い、刹那とフレイアはお互いの部屋に入るのだった。

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