第13話.生徒会勧誘

「失礼致します。宮本刹那さんはいらっしゃいますか?」


刹那が帰ろうとしている時に教室に訪れたその人物は覇王学園の生徒会長様だった。

しかし、刹那はその声を無視し、そのまま教室を立ち去ろうとした。

「おや?宮本刹那さんどこにいくのです?」

刹那は気づかれた!


見つかってしまってはめんどくさいが、相手せざるを得ない。刹那はめんどくさそうな顔をしながら、

「なにか俺に用事でも?」

その返事に対し、生徒会長についてきていた生徒会の2人が顔を顰めるが、当の本人は気にした様子もない。

「ええ、毎年、入学試験を首席で合格した生徒には生徒会の勧誘をさせていただいております。どうです?興味はありませんか」

その言葉とともに生徒会長は刹那に微笑みかける。

しかし刹那はというと

「え、だれ?」

生徒会長のことを知らなかったようである。

これには生徒会長も微笑んだまま凍りついてしまっている。そして、生徒会長とともに来ていた2人が怒りの表情を浮かべながら生徒会長の前に出てきた。

「貴様!先程から会長に向かってなんという言葉を使っているんだ!」

「入学式で会長がしていたとても素晴らしい挨拶を忘れたのか?」

などと言っているが刹那は自分の出番以外入学式の話は聞いていなかったので覚えてるはずもない。

「へえ。その生徒会長様が俺に何かようか?」

その言葉で意識を取り戻した生徒会長様は

「で、ですからあなたを生徒会に勧誘しに...」

「え、やだ」

先程の勧誘の言葉を言ったのだが、刹那は速攻断った。

「え、あの、理由を聞いても?」

まさかの速度で断られたため、生徒会長は混乱している。

「面倒だから」

刹那らしいといえば刹那らしい物言いだが、この場では悪手である。

「貴様、いい加減にしろ!」

その言葉とともに2人のうち1人が魔法を使用しようとしたのだが、

「やめなさい」

生徒会長の有無を言わせない声が聞こえたかと思うと

「す、すみません」

と怯えたかのように下がった。

「うちのものが失礼しました」

「そんなことはどうでもいいのだが。あの程度じゃどうにもならなかっただろうし」

刹那がそう言うと先程魔法を発動しようとした役員が悔しそうにこちらを睨んでいる。

「随分と自分の腕に自信があるのですね」

「自信?そんなものない。ただ事実を言っているだけだ」

「そうですか。もっと生徒会に欲しくなってしまいました」

「別のやつを探すんだな」

「いえ、まだ今月はこれを使っていなかったので使わせていただくことにします」

「これ?」

「宮本刹那。私、覇王学園生徒会長ミーア=フレイムは学園序列上位者権限としてあなたに強制決闘を申し込みます」

「強制決闘?」

「はい。学園序列が20位以内の者のみ使える権限で強制決闘を申し込まれた相手はその名の通り決闘を断ることができません」

「なるほどな」

「驚かないのですね」

「まあそう言う規則があってもおかしくはないと思ってたからな。それよりも俺が驚いたのはあんたの名前だな」

「名前?」

「ああ。俺の最初の友達もフレイムだからな」

「ああ、それは私の妹ですね。出来損ないの」

そう言われた途端先程まで黙っていたフレイアの肩が震える。


「入学試験を次席入学で出来損ないねえ。随分と厳しいんだな」

「あれは魔力量以外で芸がないですから。その魔力量ですら今年は負けているようですし」

「そうか。まあ他の家庭のことにまで口出しはしないさ」

「そうしてくれると助かります。では決闘の話に移りましょうか」

「ああ」

「では今からあなたの端末に強制決闘の申込みを送ります。確認をお願いします」


ミーアがそう言うと刹那の端末が震える。


「ああ、確認できた」

「ありがとうございます。それでは決闘ルールを決めましょう」

「決闘ルールも自分たちで決めるのか?」

「はい。この学園の決闘はお互いで話し合って決めるようになっています」

「なるほど」

「では私からは相手が降参するまたは意識不明になったら終了というルールを提案します」

「それでいいぞ」

またしても刹那は即答だった。

「話が早くて助かります。では次はお互いが勝利した時の報酬ですね。」

「なるほど。そちらは学園から金をもらうんじゃなくて相手に何かを要求することも可能ということか」

「はい。もちろん無理のない範囲ですが」

「まあ大体わかってはいるがどうするんだ」

「ええ。お察しの通り。私が勝った場合はあなたに生徒会に入ってもらいます。そしてあなたが勝った場合は私の学園序列1位があなたのものになります」

「まあ妥当だろうな。それでいい」

「これに関しても即答ですか」

「ああ、最初からわかってたしな断って話を伸ばすほうがめんどくさい」

「では、端末にも書いてありますが一応決闘会場のルールを説明しておきます」

「ああ。頼む」

「はい。まず決闘場には学園長が張った特殊な結界があり、その結界内ではどんなに大きなダメージを受けても身体的外傷にはならず心的外傷に変換されます」

「まあ妥当だろうな」


刹那は相槌を打ちながらミーアの話を聞いている。

「心的外傷とはいえ精神に攻撃されているわけなので当たると普通に痛みはあるのでお気をつけください」

「ああ」

「そして全ての決闘は誰でも観戦することができ、決闘者たちの話し声などは彼らに聞かれることはありません」

「生徒会長との試合ならおそらく満席になるだろうな」

「ええ。それもあり、一番大きな会場を抑えますので。おそらく学園生の半分以上は来るでしょう」

「まあ観客なんていてもいなくても変わらないが」

「ええ、その通りですが、人によっては緊張するそうですよ」

「ふーん」

刹那はすでに興味がなくなってきたようだ。

「これで決闘についての説明は終わりですが、何か質問はありますか」

「決闘はいつやるんだ?」

「そうでした。肝心なことを忘れていましたね。決闘は一週間後でどうでしょう」

「ああ、それでいいよ」

「はい。それでは一週間後に第一決闘場でお願いしますね」


ミーアがそう言いながら端末を操作すると刹那の方に確認画面が送られてきた。


「一応確認をお願いします」

刹那は一瞬で目を通すと

「ああ、確認できた」

「ありがとうございます。では決闘成立ですね」

「ああ、そうだな。もう帰っていいか?」

「はい。いいですよ。一週間後はよろしくお願いしますね」

その言葉を背に刹那は寮へと向かった。

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