転章
緊急報
「うるせぇ! ぶッ殺されてぇのか、
枕元に置いていたスマホが鳴って、アタシは思わず怒鳴りつけていた。
液晶画面には弟の名前。
クソが! 人の睡眠の邪魔しやがって! 殺す! ぜってぇブチ殺す!
「い、いや、もう昼過ぎだぜ? まだ寝てたのかよ」
「あぁん? こちとらレポート明けで二徹目明けだ。なンか文句あンのか、コラ!?」
目上の者に迷惑をかけ、そのうえ弟の分際で口答えしやがる。
許さん。殺す。
「あ、あ……、そ、そうだったんだ。わ、
こっちの状況と、なによりアタシが激怒していることがわかったのか、声音に怯えが濃くまじる。それでも食い下がってくるたぁ、いい度胸だ。
「アタシの耳に入れといた方がいいこと、だぁ?――ああ、いいだろう。言ってみろ。ただ、もし、それがくだンねぇことだったら……、覚悟しとけよ」
機嫌がどんどん悪くなっていく。
寝不足は美容の敵だってのに、それを妨害するたぁ、よほどの
弟が電話回線のむこうで唾を飲む音が聞こえた。
「……に、……んながよってき……る」
緊張か、それとも恐怖か――音量は小。声も
「貴様、なに言ってンだか、全然聞こえねぇぞ。男だったら、性根いれてシッカリ喋れや、コラ!」
イライラがつのって、再び怒鳴りつけていた。
昔ッから、トロくせぇ、
そこまで考え、ほんの少しだけ、にんまり頬がゆるんだ。
アタシの憧れの人。
知的で優しく、でも、しっかりとした芯があって、毅然とした人。
(おじ様……)
思わず呟きがこぼれでそうになった時、
「おっちゃんに、若い女が寄ってきてる!」
緊張、恐怖の反動だろうか――電話の向こうで
「……姉貴?」
恐る恐るといった感じの弟の問いが耳に届いた。
自分の報告に対してアタシが何にも言わなかったからビビったんだろう。
いや、弟が伝えてきた情報は、マジもんで衝撃的だった。眠気が吹っ飛ぶくらいには。
動揺してないと言えばウソになる。
でも、いつかは……と、内心、危惧していたことでもあった。
だから、ある程度の心構えはできている。
アタシは深呼吸した。
「で……?」
弟に向け、問いかけてやる。
「い、いや、『で……?』って、なに? 『で……?』ってだけ言われたって、意味わかんないよ」
アタシは、また息をつく。
今度のは溜息。
「だから、お前はダメなんだよ。ホント使えねぇ」
当然の指摘であるのに、なんだかムッとしたような感じの弟に向けて
「
見るからに大人の男性で、魅力あふれる紳士。
女だったら、絶対放っておかないだろう。
だから、ク○に集まるハエみたく女がたかってくるのは、まぁ、当然ではある。
しかし、それをバカな弟が、指をくわえてただ見ているだけだとは、まったく思いもしなかった。
あぁ、おじ様にふさわしい女になるべく、日々がんばっているアタシだけれど、とりあえずは美容のための睡眠は一時パスしてでも、対策たてなきゃならないだろう。
まったく……!
こうしちゃいられない!
*
と、ここで、(申し訳ありませんが)このおはなしは一時オヤスミいたします。
毎日更新で、ほぼ一ヶ月の間やってきましたが、ここらでアゴがあがったと言うか、さすがに燃料が尽きました。
どこがラブコメ? な感じの作でしたけれども、それでも読んでくださる方、応援してくださる方が励みとなって、書きすすめる作業は楽しいものでした。どうも有り難うございます。
つづく二章は、この転章で出てきた女の子が主人公となります。
ラブコメ熱がふたたび満タンに充填されましたら、再開いたしますので、その際には、また、ご一読いただけましたら嬉しいです。
喪男オヤジと婚渇ガールズ-Weekend Highway Star- 幸塚良寛 @dabbler
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