第23話

王様が言いました。

心配せずとも、我らの姿は他人には見えないようにしてある。

やがて、ヨシオ君の家が見えてきました。

家の前には、ヨシオ君の家族となおちゃんの家族が待っています。

王様はみんなの前に降り立つと、姿を現しました。

ヨシオ君は、驚いているみんなに言いました。

みんな、ただいま。どう?大きくなったでしょ?

ヨシオ君のお母さんは、泣きながらヨシオ君を抱きしめました。

確かにあんたはヨシオよ。昔の面影が残っているもの。お帰りなさい!

それで、そちらの方たちは?

おばけの王様と妹のローチェさんだよ。とてもお世話になったんだよ。

ヨシオ君となおちゃんのお父さんたちは、はっとして王様に向き直るとおじぎをして言いました。

うちの子どもたちがお世話になりましてありがとうございました。

王様は言いました。

なに、こちらも助けられているからな。

二人がおばけのたまごの呪いを解いてくれなかったら、我は表世界と裏世界との境界が破裂するのを防げなかったよ。

もしも境界が破裂したら、両方の世界で大災害が起きるところであった。

王様は、ヨシオ君に向かって言いました。

これはたまごの欠片で作った、おばけの国の鍵だ。

もしも、表世界が生きにくくて疲れてしまった時は、この鍵を手にして、我を呼ぶがいい。

おばけの国は、いつでもそなたたちを歓迎するぞ。

ヨシオ君となおちゃんは見つめ合いました。

とりあえず、僕たちは表世界で頑張ってみようと思います。

でも、すてきな選択肢をありがとうございます。

この鍵は大切にします。

王様はうなずくと、にっこりしました。

そうか。それでは、我らは行くとしよう。

では、さらばだ。

王様はそう言うと、ローチェを抱きしめました。

そしてふわりと浮き上がると、ふっと姿が見えなくなりました。

なおちゃんとヨシオ君は、顔を見合わせました。

行っちゃったね。

うん。

なおちゃんが言いました。

もう、離ればなれはいやだからね。

ヨシオ君も言いました。

もう、離さないからね。

二人は手を取りあって、いつまでも空を見上げていました。

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世界の裏側の国 OZさん @odisan

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