第3話 線香花火と二人の思い。

ぱちぱちと燃える線香花火は、夜に咲いた牡丹の花のように美しく、ぼんやりと優しい光に照らされた、君は小さい子供のように無邪気に笑った。


僕も、君につられて笑った。


線香花火は勢いを増して、火花を散らした。


そんな様子を眺めながら、この先も君と笑い合うことができたら、辛いことや悲しいことを君の隣にいる時だけでも、忘れられると思った。


「ずっと、一緒にいて欲しい。」


自分でも何を言ってるのか分からなかった。

数秒前の僕を呪ったがそんな事をしても、意味が無い、恥ずかしさと緊張で火照った顔に、涼しい夜風が頬を撫ぜる。


線香花火の音はちりちりと小さくなり、やわらかく長い、火花を精一杯に垂らしていた。


彼女は少し驚いた顔をしたあと、笑った。

僕が大好きな、無邪気な笑顔で一言。


「私も、一緒にいたい。」


僕は安堵した。

ほどけた緊張の糸は、緩みきって間抜けな顔を君に向けて精一杯、笑い返した。


その不器用な笑いに、嫌気がさしたのか線香花火はじゅっ音を立てて、落ちた。


川を流れるやわらかな水の音を背に、鈴虫は歌い、夜風に乗って鼻をくすぐるのは線香花火の香りは、夏の終わりを感じさせた。

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君と僕と夏 べんち @ad440

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