進むか戻るか

門が近づいてくるとこの施設の従業員と思われる人だかりを見つけることが出来た、

見える範囲だけでも100人はいるだろうか。


「ここまでの規模なのか、、、」


「やっぱり、弱気になってるわね。ちゃんと当たりをつけとくの忘れないでよね。」


「引き返してもいいんだよ?」


二人の言葉は方向性は違えどどちらも私を思っての言葉だろう、

しかし“無事に情報を持ち帰る”ことが最善である以上私が弱気になってはいけない。


「…やらなければ」


ここまでの人数が集まると隣の人間の顔など

覗き込むこともないので自然にその列に加わることが出来た。

その後も人を隠すなら人の中とはよく言ったもので

鋼鉄の門を超えることは容易かった。


「意外といけるものね、、、」


「…しっ」


内部に侵入すると従業員どもはそれぞれの職場へ分かれていった。

私は自らの能力を行使し、“緊張”している。ものを見つけ出し

さも同じ場所で働くかのように同じ方向に向かった。

一介の従業員でありながら重要な業務を任された者は心が乱れている

だろうことは簡単に推察できた。


「今だ!」


つけていた従業員が一人になったときポデルに抑え込ませ物陰に連れ込んだ。

もちろん反抗はしたが一般人レベルでは振りほどくことはできず恐らく能力の予備動作であろう振り上げた手もろともその場に倒れこむ。


「さて、探らせてもらうぞ。」

私は従業員のポケットや襟元など、物を隠せそうな場所を確認していく。

その時、不意に従業員の首元に手が触れた。


(ドクン…)


「うっ、なんだこれは……」


頭に流れ込んできたのは明らかに私の知らない光景、

見知らぬ人に話しかけられている、

それなのに日常のように感じられて気持ちが悪い。

次の瞬間にはつい先ほど見た光景、

巨大な鋼鉄の門を通り抜け、無機質な通路を歩いている。

しかし二重ポケットからカードキーを取り出し部屋に入っていく。

その中には、、、



……ル


………ドール!


「…ん」


「よかった、どこかおかしいところはない?」


「ああ、平気だよ。それより私はどうなっていた?」


「従業員の襟元を探っていた時に急に倒れちゃって、

 そうゆう能力者かとも思ったけど向こうも気絶してるし。」


「そうか、実はな、、、」


私は流れ込んできた記憶のこと、カードキーで開ける扉の奥に何かが確かに存在すること。

そして前回の仕事で倒れた時の違和感を話した。


「確かに能力は成長することはあるけどそのほとんどが成人前に終わる。

そんなことが本当にあるなんてね。」


「私も驚きだ、でもそのおかげで先に進める。」


「そんな危険な状態で進む気⁉」


「そうだよ、意識も失っていたしリスクが高すぎる!」


「もう引けないところまで来ている、せめて扉の奥に何があるのかだけでも

 確認しなければ…」


「君はもう引く気はないんだね、でも確認したらすぐに帰るからね?」


「ああ、分かってる。引き際はわきまえてるよ。」


私たちはカードキーを抜き取り、流れ込んできた記憶に従い奥へ奥へと

歩みを進めていく。

幸い記憶のおかげでいつもの通勤路のように迷うことなく目的の場所まで

たどり着くことができた。


「ここか、えらく頑丈そうな扉だな。」


「うん、僕にもこじ開けられそうにないよ。」


「ま、まあ何が出ようと私が全部つぶしちゃうかりゃぁ」


緊張の糸がキリキリときしむのがわかる。

この先に何があるのか、“ガーディアン”の謎に迫れればいいのだが、、、









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正解か間違いか 雨降 晴 @lluvia

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