思い付き
「ハァ……ハァ……」
葵と話してたところから3分全力疾走でコート脇まで戻った。
なんとか部活開始までには間に合ったが、息が上がっていてそれどころじゃない。
――まずは乱打なー!
コート入り口から顧問の掛け声が響いてくる。
息が上がったままラケットを取ってコートに入る。
「おい澪、なんでそんな息上がってんの」
「あー江崎先生……ちょっとランニングしてまして……」
「部活に影響ない程度でしろよー。つらかったら少し休め」
「あーあざます」
顧問と少しだけ会話をしてみんなに交じって練習をはじめる。
***
「なぁんか椿さwww、3人に告白したらしいよwww」
「うわーマジ?女誑しというかさ、きもくね?」
「無理だったから次!って感じ?」
しばらく練習した後。コート脇で休憩を取っていたらそんな会話が響いてきた。
同じテニス部の女子たちの会話だ。澪のことに気づかないのか、告白の話題に夢中になっているようだった。
澪はこの程度の被害なら、別に何もしなくてもいいだろうと思った。
しばらく乱打をした後、顧問からの指示で部内戦を行うことになった。
ソフトテニスは基本ダブルスで行う。
ペアは
部内で1番手を争っているくらいには実力がある。
「なあ冬生、今日どういう戦い方で行く?」
「そうだなぁ澪、前衛に積極的に打たせたいから、俺は相手を崩すように打つわ。」
そんな感じに冬生とはいい感じの雰囲気でペアをやっている。
1試合目は対男子。結果は3-2。いきなり接戦で疲れてしまった。
2試合目は対女子。相手は……
――さっき告白の噂で笑い合っていた女子ペアだ。
「ねえ椿ぃ。3人の女子に告白するってどういう神経してるのぉ?」
わざと煽り口調で聞いてくる。
澪は「は?」という素っ頓狂な声しか上げられず、横にいた冬生が今は部活中だから、と相手をたしなめてくれた。
「おい澪、お前3人に告白したのか?」
「なんだよ冬生。真に受けてるのか?」
「いやそうじゃない。確認だ」
「あーね。告白なんてしてないぞ。好きな人もいないし」
「してないんだな。じゃあさ澪、あいつらに絶対に勝とうな」
「おう。」
言葉を交わして、定位置につく。
俺はネット際、冬生はベースラインに立つ。サーブは相手。
***
結果は3-1。少々力みすぎてミスが目立った。
「お疲れ様。冬生」
「そっちこそな。」
負けた女子たちは変な噂を流されてる澪に負けたことが気に食わなかったんだろう。
「女の敵が、調子に乗るんじゃないわよ!」
と逆切れされてしまった。
そのまま3試合目も勝って今日は全勝だった。
***
部活が終わった。
部活着を脱いで制服に着替え、荷物をまとめているところで背後から声をかけられた。
「やっほ!澪、お疲れ様」
「うおっ!びっくりした――って葵か」
「途中から澪をコート脇で見てたのに、気づいてくれないんだもん」
「試合してて集中してたから」
「それより!急に走っていくからびっくりしたよ」
「あーそれはごめん。今度埋め合わせするから許して」
「許しましょう」
そのまま何で埋め合わせをするか、葵と話しながら荷物をまとめ、家に帰った。
***
家に着いた俺はまずお風呂を沸かして、汗をかいた体を綺麗にしていく。
頭を洗って体を洗って、綺麗になった状態で湯船につかる。
「ふぅー。」
湯船の気持ちよさから思わずため息が出る。
告白の件を思い出す。
俺はなんもやってない。告白どころか連絡先すら持ってない。
けど、否定したところで『あいつ必死で草』とか言われるのがオチだろう。
んーどうすればいいものか。
んー...思いつかない。
***
考えがまとまらず、水滴がついた天井を―ぼーっと眺めていたら、体が茹でだこのように真っ赤になっていた。
お風呂から上がって、冷えた麦茶を体に流し込み、冷やす。
「あ、そうだ」
俺はあることを思いついて、携帯を取り出して、LINEを起動させる。
そのままクラスのグループからある人を追加して連絡をする。
澪『突然追加わるい。今話せますか?』
と送っておく。
上手くいけば事態の収拾は望めるだろう。
少し画面を見つめて、すぐに既読がつかないことを確認して、携帯をポケットに戻す。
そのまま夕飯を食べて、部活により溜まった疲労に勝てず、すぐ寝てしまった。
澪の簡単な思い付きが、この状況をかなり変える分岐点だということを、澪はまだ知らない。
**********
あとがき
お久しぶりです。コグレメグルです。
模試やら試験やらが重なり、執筆が大幅に遅れてしまって申し訳ありません。
最後に大きな伏線を置いておきました。さてどうなるでしょうかね(笑)
この話でプロローグが終わり、第1章に入っていきます。
引き続き、読んでいただけると幸いです。
天才といわれる俺が、女誑しと呼ばれてるんだ コグレメグル @Tsugano
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