せかいの終わりに読む話

@korokorro

第1話 隣の君は誰?

普通とは。

辞書によると

「[名・形動]特に変わっていないこと。ごくありふれたものであること。それがあたりまえであること・・・」

つまり、ごくありふれて当たり前のことなのだと。変わっていない。


ボクは疑問に思う。

普通とは一体誰を基準に普通というのだろうか。

当たり前とは何なのか。


例えば、部屋の四隅にゴキブリがいたとしよう。

そのゴキブリを見つけたら大抵の人は潰すか殺すかをするだろう。

外に逃がしてやる人はいなくはないだろうが、少数派であろう。

その少数派が良くて、多数の殺す判断が悪いとは言わない。

多数派の回答が正解なのか。

多数派。

大学に進学する。

物を盗んではいけない。

人を殺してはいけない。


そんな普通が、人の行動を制限する。

そして、苦しめる。




「やめてよ、止めないでよ。これ以上近づいたら飛び降りるよ。」

その子は今屋上にいる。

きっとその醜い鼻の高さがその子を追い詰めたのだろう。

今はハーフは珍しくないが、田舎では例外のようだ。

人は他の人との相違点を見つけ出し、それを否定することで自分を肯定する。

小学生となれば、見た目ほど簡単に見つけられる物はない。

「おいおい、よせよ。俺は君を止めに来た訳じゃねーぜ。」

「じゃあなんで来たんだよ。ボクは今から死ぬんだぞ。ほっといてくれよ。」

この子は滝のように涙を流し、顔をくしゃくしゃにして柵に必死に捕まっている。

「死ぬなんて言うなよ。そんなおしっこ漏らしそうな足で、一歩踏み出せるんか?」

「で、できるもん。」

そう言ってその子は言って一歩踏み出して、屋上からの地面を見た。

そこから見える景色は、ああ、なんて言うのだろう。

体育をしている2年生。元気に徒競走の練習をしている。

「おお、あいつら徒競走の練習をしてやがる。いいな、俺も走りたいな。そう思うだろお前も。」

そう言って隣を見ると、男のも柵を越えて隣にいた。

「お、おい、こっちくるな。本当に飛び降りるぞ。」

そういって、後ろ向きでどんどん離れていった。

次の瞬間。がくっ

滑らせて落ちてしまった。

「わぁー、あ、あああ、。」

次の瞬間、男の子が、その子の手をつかんで落ちるのを引き留めた。王道的展開だ。

「おいおい、まだ早いぜ。話が終わってないぞ。」

そう言ってにこって笑って見せた。

「俺はお前が死のうが死ななかろうが知ったこっちゃない。その過程を楽しんでいる。お前が絶望した時の表情。俺が来たときに、少し綻んだ頬。飛び降りるには震えすぎな足。全く滑稽だよ。死ぬなら、そう希望を持つなよ。」

彼の目を見て続けた

「お前は、たまたま運が悪かっただけだ。竹沢がお前に目をつけて、散々いじり倒して、引けなくなったから今も続けているだけ。別にお前を思っているやつは他にいる。そうだろ。クラスの前田とか、隣の席の川口とか。別に俺も嫌いじゃないしな。」

そう言って、恥ずかしそうにその子を見た。

「だから、もう飛び降りようなんてするな。お前はひとりじゃない。俺もあいつらもついている。」

そう言って笑顔を見せた。

その子はその言葉を聞きながら、元から流れている涙がもっとあふれ出した。

「ほら、そうと決まれば引き上げるぞ。」

そう言って、男の子は引き上げてくれる。。

のかと思った。誰しも思っただろう。


その男の子は手を離した。

笑顔ひとつ無い顔で落ちていくその子を見ていた。


その子は地上に落ちて、血をながして死んだ。

男の子は顔色一つ変えずに屋上を去って行った。

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