SUPER super

エリー.ファー

SUPER super

 私は、この世界で超能力者と呼ばれている。

 願えば、人を殺すことができる。

 そのため、私はその能力を軽々に使ってはならないと国から注意を受けた。しかし、私がその能力を使ったかどうかについては、私以外に判断することはできない。

 残念ながら、私の立場に近づくことはできない。

 無理もないことである。

 運命に干渉するような能力であると聞いている。超能力と呼ばれるものはいくつもあったが、その中でも強力なものであると聞いている。

 忘れてはならない。

 私はただの超能力を持っているだけの人間だ。

 モラルが人並以上にあるわけではない。

 気づかれないように八百人ほど殺している。

 まだ、誰も気づいていない。

 私はいつも皆から気を使われて生活している。パフォーマンスとして、皆にそんなに気を使わないでくれ、とは言う。しかし、もっと特別扱いしてほしいと考えている。

 私にとって、私以外の命の尊さは私の気まぐれよりも軽いのである。

 特別である。

 これに勝るものがあるのだろうか。

 私が私としてここにいる。そして、それはこの先も続くのだ。

 一応、悪役のようなものは出てくる。しかし、勝負にならない。弱すぎるのだ。

 悪役は必ずと言っていいほど、大きな弱点を持っている。それらは既に分析が進み、どこをどの程度どのような手段を持って行うべきか分かっているのだ。こうなると、超能力などではなく軍でも対応可能ということになる。

 私の価値は私が他の者たちといかに差別化できているか、ではない。

 私の価値は、ないのだ。

 最初から今まで、ずっとなかったのだ。

 幻を見ていた。

 羨ましがる者たちもいる。私になりたいと口に出す者さえいる。

 でも、そこに差はないのだ。

 私は超能力があっても、命の価値を高めることはできなかった。

 もちろん、超能力を持っていなければこんな考えができるようにはならなかっただろう。ある種の達観。悟りでもある。

 何も持たずに、何も得ることなく、言葉だけは吐き散らかす馬鹿どもと同じ立場でものを語っているわけではない。だから、私の方が明らかに上で、明らかに質の高い人生を生きている。

 これは事実だ。

 トップの無価値を、トップを取ったこともない人間たちが語るのだ。

 本当に、同情してしまう。

 そして、かなり笑える。

 



 あの超能力者をぶっ殺そう。

 もう、我慢できない。

 あいつのあの態度のせいで、どれだけ俺たちが嫌な思いをしてきたと思う。

 俺は、あいつのことが大嫌いだ。みんなだってそうだろう。

 え。

 なんでだよ。

 なんで我慢するんだよ。

 やり返さなきゃ気が済まないだろ。そうだろうがよ。

 でも、実力と才能はあるから認めざるを得ない、だと。

 そんな言葉のせいで死ぬまであいつの下にいるなんて、絶望だろうが。

 確かに俺たちは肩書もあるし、凄い派閥にも入ってる。完璧だ。でも、立場が完璧なだけで誰も俺たちのことなんか見てない。死ぬまで影だ。死ぬまで誰の視界にも入れてもらえない。

 俺たちは凡人だ。

 でも。

 凡人でもここまで登ったんだ。

 だったら。

 最後の才能という壁にだって、立ち向かいたいんだ。

 分かるだろう。

 分かっているから、みんなだって黙って俺の話を聞いているんだろう。

 じゃあ、戦うしかないだろ。

 ここで。

 俺たちの命の価値を見せつけなきゃ、生まれて来た意味がないだろう。

 そうだろうみんな。



 

 お前らの人生の至上命題は、天才に睨まれないように生きることだろ。

 馬鹿か。



 

 多くの人が持続を願う。

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