第33話 Eランククエスト②
予定の時間。
俺たちはギルドに前に戻っていた。
正直、扉を開けるのが少し怖い。
無事にクエストを終えられるだろうか。
俺がゆっくり扉を開けると、明らかに態度の悪い二人組がのけ反るように椅子に腰掛け、足を組んで座っている。
「こんにちは。今日は宜しくお願いします。」
俺が挨拶すると、二人組の一人がチラッとこっちを見て舌打ちした。
「Fランクのガキ二人かよ。」
あからさまに嫌そうな顔をしている。初対面でこの対応はないだろう。
「他には来ないのか?」
「登録されてたのはこいつらだけだ。」
あまり話したくないが、一応確認しておかないといけないか。
「一緒に参加させてもらっていいですか?」
「はあ?お前らと行ったって足手まといになるだけだろう。Fランクなんかに用はねえんだよ!早く帰れ!」
こちらを睨みながら左の男が言う。
「そんな言い方はないでしょう!」
なんてやつだ!
俺もさすがにムカついたので言い返したが、黙っていたもう一人のほうは若干態度が変わった。
「まあ、誰もいないよりはいいじゃねぇか。のたれ死ぬのは勝手だが、少しは役にたつかもしれねーしな。」
二人は顔を見合せ、そうだななどと言いながらニヤついている。
何を企んでるのか知らないが、参加させてもらえればこっちのもんだ。なんか名前を名乗っていた気もするが、覚える気もないので、モブABと名付けておく。
イベリアは相変わらず興味がなさそうな雰囲気囲。そこまで人間の言葉が分かってないので助かった。
◇◇◇
カルカスを出て、俺たち四人は森に着いた。
ギルドには採集クエスト用の麻袋やコンパスなど無料で提供されている備品がいくつかある。今回は部位回収なので一応麻袋を何枚か持ってきた。
ホワイトウルフは森を少し入っていかないと出てこない。
あまり一緒に行動したくないし、今回は出来高せいなので、共同してクエストをこなす必要もない。
モブたちも同じ考えだったようで俺たちに指示してきた。
「俺らはお前らと一緒に行動するつもりはない。死ぬなり逃げるなり勝手にしろ。」
モブA、いやBだったか、がそんなことを宣っている。
「分かった。」
俺たちも当然そうしようと思っていたところだったので、なんの問題もない。
モブペアと別れ、俺たちは早速ホワイトウルフを探すことにした。
「嫌なやつらだったね。イベリアは大丈夫だった?」
ご機嫌確認のためにも俺はイベリアに話しかけた。
「別に。なんか睨んでくるのはムカつくけどね。」
意外と平気なんだな。
魔族もあんなやつらばかりなのか?
もしくは言葉のニュアンスまでは伝わってないのかもしれない。そもそもあいつらに興味がないんだろうから、まぁ良しとしよう。
俺は感知を発動させ、辺りを探った。
森の少し奥まで来ると魔物も多くなってくる
。ホワイトウルフっぽい反応が複数。
俺たちが反応のする方向に向かうと四匹のホワイトウルフの群れを発見した。
ホワイトウルフ
種族: ウルフ 種目: 通常種
体力:53/53
魔力:0/0
攻撃:36
防御:28
知力:10
速度:32
【基本スキル】噛みつき・呼び寄せ
討伐は俺らにとって何の労力もないのだが、牙だけを持ち帰るというほうが難しいというか面倒くさい。スキルで仲間を呼び寄せることもできるようだ。
どうしたものか。麻袋持ってきたけど、とりあえず倒して空間収納にでも入れて持って帰ろうかな。
などと考えているうちにイベリアはすたすたとホワイトウルフのほうへ歩いていく。
すると魔物たちは腹ばいになり降伏のポーズをとった。
討伐するまでもないということか。
イベリアは何か魔物たちと会話しているようだ。
「牙はいくつあればいいの?」
イベリアが俺に問いかける。
「あればあるだけ欲しいけど。なに?どうなったの?」
「やられた仲間たちの牙があるから、くれるって。」
なんと。
普通の冒険者では考えられない展開だな。
魔物たちが走り出したので、俺たちもそのあとに付いて行く。
少し走るとホワイトウルフたちの巣穴に到着した。中には大量の牙を始め、拾ってきた色々なものが中に入っているようだ。
ホワイトウルフの牙は硬度が高く、鉱石に似た性質があり、若干の魔力を帯びているためヒーリング効果がある。そのため、人間界でも装飾品として人気が高い。
全てもらうのは悪いので、俺たちは袋に入るくらいの量を分けてもらい、お礼を言ってその場をあとにした。
ワーキング・ヴァンパイア ~強すぎて世界が滅んでしまうので、極力戦わないことに決めました。~ シマリス @shimaris
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