第32話 Eランククエスト①
「早くクエストやろうよ。」
イベリアはなんだか楽しそうだ。こんな表情は洞窟の時以来だな。
「そうだね。あそこに依頼案件が掲示されているから見てみよう!」
お馴染みのクエストボードを見ると、昨日とあまり変わり映えなかったが、Eランククエストが差し替えられていた。昨日は確か要人警護だったよな。
今の依頼案件は、
ランクF キュア草採集
ランクE ホワイトウルフの牙採集
ランクD オーク討伐
FとDは相変わらずだ。おそらくFは毎日一定の需要がある鉄板クエストなんだろう。
結局、今できるのはキュア草採集だけだ。
「俺たちはまだFランクだから、キュア草採集しかできないね。これやってみる?」
イベリアの眉間にシワがよる。
「採集って、草むしりってことでしょ?」
「まあ、草むしりっちゃ草むしりだけど、キュア草っていう薬草なんかに使われる大事な、、、」
途中まで言ったところで俺の言葉は遮られた。
「そんなのやだ。戦うやつはないの?」
え~、またそんなワガママ言って。まったく~。
DとEは討伐クエストみたいだけど、俺たちだけじゃできないし。
「じゃあ、すぐできるか分からないけど、他の冒険者がDとEのクエストをする時に混ぜてもらおうか。」
「もうそれでいいや」
パーティーメンバーを募集したい時はクエストボードの横にあるリクルートボードにメンバー募集の掲示をすることで、メンバーの募集とクエストへの参加予約ができる。
募集する理由は自分たちだけでは手に負えない案件だったり、人数が多いほうがクリアしやすい案件だったりと様々だが、低ランク冒険者が上位ランククエストに挑戦できる方法でもある。
魔水晶にはそれら全ての情報が記録されている。どちらかというと魔水晶さえあればボードは必要ないのだが、高価な魔水晶は数が限られているため、補助的にクエストボードやリクルートボードが設置されているといった状況だ。
魔水晶の操作はギルドスタッフはもちろんのこと、自分で行うこともできる。
俺は直接、魔水晶にEランククエストの参加予約をしてみようと思い、ギルドカードをかざした。
自分のギルド情報画面の横にクエストとリクルートの情報が表示されている。
空中に映し出されているリクルートの文字に触れると、画面が自分の画面からリクルート画面に切り替わった。
お?!
ランクEクエスト、ホワイトウルフの牙採集にはすでに先約がいるようだ。参加希望者は今日の十二時にギルド集合とのこと。
このクエストは出来高制のため、採集すればするほど報酬が増える。
俺はクエストボードの討伐依頼書を確認してみた。
クエストランク:E
条件:ホワイトウルフの牙の引き渡し(部位)
報酬額:1本1,000ルギア 出来高制
獲得ポイント:1本につき20P
有効期限は二日後までのようだ。
「イベリア!今日の十二時に討伐採集クエストができそうだよ。」
「そう」
素っ気ない返事だが、明らかに喜んでそうだ。
俺はすぐに参加予約。先約者は男性のEランク冒険者二人だ。
するとレオーナがおもむろに近づいてきて言った。
「このクエストを受けるんですか。気をつけてくださいね。予約している二人組はあまり評判が良くありません。お二人なら問題はないと思いますけど。」
レオーナは心配そうな表情をしている。
なんだか怖いなぁ。どんな人たちなんだ。
「前に何かあったんですか?」
「えぇ、免許取消になるほどの目立つようなことはしないんですけど、裏で何をしているか分かりません。他の冒険者と喧嘩になったりとか、この前は一緒に行った冒険者が泣きながら帰ってきましたから。」
一体どんなやつらなんだ。
そいつらよりもイベリアが我慢できるかの方が心配だけど。
「レオーナさん。情報ありがとうございます。僕は大丈夫です。」
僕たちと言える自信がなかったのは言うまでもない。
ギルドを出ると陽がだいぶ昇っていた。
もうそんなに時間もないが、十二時までまた少し暇つぶしだな。
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