玉川上水にまつわるお話です。いつものデートコース。瑞樹と二人、たわいもない話をしながら歩いていた道。自転車の疾走と過去のシーンの構成が上手いです。素敵なお話でした!
玉水上川の四季と、あの子の話を思い出しながら、彼女は走る。水と水とがもつれてからまって、揉みあって、みずから音を発する、川の音。あの子が大好きな玉川上水。美しい武蔵野の景色と歴史。そして、大切な人の思い出とともに駆け抜けながら、彼女は祈る。果たして、川はどこへたどり着くのだろう?
幸桜(さくら)と瑞樹(みずき)。二人で歩いた玉川上水。彼との思い出が詰まったその道を、幸桜は自転車でひた走る。水音を追いかけ、サクラとミズキの木が並ぶ場所まで。ただひとつの、大切な願いを叶えるために。幸桜と一緒に走りながら、読者の前にも、様々な表情を見せる玉川上水の景色が次々に現れます。切ない願いと武蔵野紀行が無理なく組み合わされた、味わい深い短編です。色彩豊かな玉川上水、あなたも共に走ってみませんか。