かわいい掌底
シヨゥ
第1話
「子供がかわいい。子供が不慣れながらもがんばって歩く姿はほほえましくて好きだ。
犬がかわいい。散歩中の犬がこちらの視線に気づいて、ご主人様から視線をこちらに移してくれた時なんて目を細めてしまう。
猫がかわいい。頭をかいてやると押し付けてくる姿なんてたまらない。
女の子がかわいい。とくに好きな女の子のちょっとした仕草に癒されてしまう」
「っで、なにが言いたいの?」
「つまり、ボクはきみの仕草に癒されていただけっていう」
襟首をつかまれた状態で彼女にボクの行動の正当性を訴えている。かわいいものに癒されるという本能を伝えたい。その思いで必死に説明している。この状況、ボクが逆に訴えられるまである。
「キモイし」
「それはボクも思うところではあるんだが、童貞をこじらせた都合上好きとも言えず。ただただ見て癒されるのだけはご容赦いただないだろうか」
「好きとか本当キモイ」
「ボクもこの状態で告白じみたことを言ったことは大変後悔している次第であります!」
終わりを悟り、ボクは力を抜く。ナマケモノが外敵に襲われたときに痛くないように力を抜くというあの状況だ。掌底のひとつで済めば御の字。それぐらいの気持ちでぼくは目をつむる。
「まぁ気持ちはうれしいけどさ」
そんな状況で聞こえてきた声に、
「デレるの早くない?」
と反応してしまい、
「うっさいし!」
と強い衝撃が顎に走る。気づけば天井を見ていた。
「次気づいたら容赦しないから!」
彼女はそう言い残しどこかへ去っていく。選択ミス。ぼくはまたフラグをへし折ってしまったようだ。
かわいい掌底 シヨゥ @Shiyoxu
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