第51話 武闘会
「……オルクス様?」
「ああいいぞ、というかどうせなら二手に分かれようか」
「え、あ、いや、別に私1人でも大丈夫ですよ?」
俺の提案を聞くとスザクはどこか慌てた様子でそう言った。
「そうは言っても流石にミリオンがいないとファルコの元に行くのは厳しいだろ?」
「……まぁそうですけど」
「俺とアロウとムーファはもう少しあのテンていう子と一緒にいるから、スザクとミリオンは先に行っててくれ」
「わ、わかりました、なんかすみません」
「いやいいんだよ、むしろそっちの方が動きやすいし」
ファルコの事は心配だが、おそらくあいつなら上手くやると俺は思っている。
けど仲間思いのスザクはいち早く助けにいきたいと思ってるはず、故にここはミリオンと一緒に先に行ってもらうのが正解だ。
「ありがとうございます」
「おう!とりあえずミリオン呼んでくるから、ここで待っててくれ」
「はい」
そうして俺はミリオンを呼んでくるために、テンの家に戻った。
「何!?それは本当なのかテン!」
「うん武闘大会は明日から開催だよ」
「そうなのか!出たい!めっちゃ出たいぞ!」
「わかるぜミリオン!俺も出たいぜ」
「あ、あんた達ねぇ」
家の中へ戻るとアロウとミリオンが何やら盛り上がっていた。
「どうしたムーファ、なにかあったのか?」
「あ、オルクス様!聞いてよアロウとミリオンがーー」
「ご主人!聞いてくれよ、明日この村で武闘会があるんだってよ、出てぇよな、出てぇよなぁ!」
「武闘会?」
ムーファの言葉を遮ってアロウが俺にそう言ってきた。
そういえば村は入る前にそんなようなことをミリオンが話してたっけ。
にしても明日か、タイミングがいいなまったく。
「私も、私も出たいぞオルクス様!」
「まぁそうだよぁ」
例のごとくミリオンもまた出る気満々である。
困ったなぁ、ミリオンには今からスザクについて行ってもらおうと思ってたんだが、うーんここはしょうがない、アレを使うか。
「わかったよミリオン出ていいよ、あとアロウも出ていいよ」
「よっしゃあ!」
「わーい!」
「ちょっと待っててな、スザクともう一回話してくるから」
そう言って俺はまた外に出た。
「え?武闘会ですか、まったくミリオンはファルコを助ける気あるんですかね」
「まぁそう言うなよ、スザクには今からもう1人相棒をつけるからさ」
「相棒ですか?」
「うん、アビリティ発動ー魔獣生成」
ファルコの居場所を知っているのは現状ミリオンだけである。
つまりミリオンがいないとファルコの元へはいけない。
そしてミリオンは明日の武闘会に出るから行けない、なら答えは簡単だファルコを見つけることができる魔獣作ってしまえばいいのだ。
「出よオーク」
「お、オークですか」
「どうもご主人、我が名はグリンどうぞよろしく」
魔獣グリン、種族はオークでレベルは180である。
強さ的にはそんなではないが、こいつにはあるとっておき仕込む。
「よーし続けて、アビリティ発動ーアビリティ譲渡、譲渡するのは追跡だ」
アビリティー譲渡、これは俺の持つアビリティを対象に譲渡する事ができるものである。
これを使って俺は以前作った追跡というアビリティをグリムに譲渡した。
この追跡というアビリティは消費魔力150で、対象者の痕跡を辿りそこへ至るまでの道筋を示すものである。
ただ対象者の通った道や触れたものから痕跡を集めたりしないといけないため、そんなに便利なアビリティではない。
まぁ、このアビリティを仕込んだグリンがいれば少なくとも俺達よりは早くファルコの元へ辿り着けるだろう。
たぶんだけど……。
「オルクス様、ありがたいのですが本当に大丈夫ですかね」
「大丈夫だ、俺を信じろ」
「ですよ姉さん、あっしを信じてください」
「あ、ああ」
グリンがそう言うとスザクの表情はさらに曇ってしまった。
まぁ不安がる気持ちはわかるけどね。
「じゃあ頼むね」
「はい、オルクス様も後から来てくださいね」
「すぐにとは言えないけど必ず行くから!」
そうしてスザクとグリンは先にファルコ探しのため村を後にした。
うーん、大丈夫だとは思うけど、もしかするとスザク1人の方がファルコ見つけるのは簡単だったかもな。
あいつ飛べるし……まぁ上手くいくだろ!それにグリンだってまったく役立たずにはならないはずだ。
木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚! 神崎あら @takemitsu
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