軽快かつハードボイルドな非日常

 映画を観ているかのような感覚で拝読させていただきました。
 冒頭、ハードボイルドな文体は非常にスタイリッシュかつ読みやすく、テロ組織や武器商人とのシーンは、緊迫感をもって読者を物語の中に引き込んでくれます。

 別の場所で起こっていることを同時に描く技巧、状況が目に浮かぶ表現は素晴らしく、登場人物の名前が明かされるシーンでは正直かっこいいと感じました。しょっぱなから登場人物が若干多く感じられるものの、それぞれの個性が際立っている為気になりません。

 いざこざのあとの第一章では一人称に切り替わり、冒頭とは雰囲気ががらりと変わります。どうも運のない人物である平凡な主人公に転機が訪れるこの章、テンポが良く軽快です。
 主人公と親友の間で語られるシャーロック・ホームズはなかなかに個性的な人物なようです。映画スターみたいな格好良いホームズさんの開口一番が謎めいていて、登場するや否や心を鷲掴みにされました。すべては推理のうえに成り立っている言葉はさすがと言えます。

 第一章の最後まで拝読した感想ですが、文体が非常に安定していて緩急があり読者を飽きさせない展開は、期待を裏切らないであろう安心感があります。
 是非続きも読ませていただきたい作品です。

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