第3話 遺伝という呪いを解きたい
自分が発達障害だと疑い始めたのは社会人一年目の時だ。
日常生活で何度も困ることはあったが
社会に出た途端
ようやく人として限界だと感じたからだ。
給与は手取り10万程。
一人暮らしだったからすぐに病院に行こうとはならなかった。
癌とかに比べたら深刻じゃないし、
自分には合わなかったんだ、向いてることがあるはず!と自分が抱えている事に対して前向きで生活もあったし深く考えなかった。
あんなに仕事ができなくてもう私は駄目なんだと思っていたのに、
会社を辞めた3日後に履歴書を持って飛び込みで近くのコンビニにお願いしに行っていた。
生活がかかっているおかげ(?)かその辺の行動力はあった。
2つ返事でオーナーから明日から来てねと言われ、
ああ良かったと安堵したが結局1年しか持たなかった。
その後はいろんなバイトを短期で辞めることに罪悪感がなくなると短期派遣のバイトばかりやるようになった。
嫌な事があっても短期だと割り切れる。
明日を生きる為に最低限しか稼げないような生活をしていると自分の将来について考える余裕なんか微塵もなかった。
将来は何か専門職に就いて自分を磨いて毎日楽しく暮らしていると学生の時は思っていたのに
実際はなんの為に働いているのかわからず、
自分の働ける範囲で精一杯働いているのにまるで
毎日サバイバルをしているような感じだった。
発達障害を持っていて社会に貢献できている人は
私は"成功者"と呼んでいる。
旦那だけは私の障害の事を知っている。
彼なりにネットで調べたのか、
たまたま見かけた"成功者"のライフハックをそのまま鵜呑みにして
ありきたりな
「確認を怠らないようにメモする」だとか
「一日のスケジュールをたてる」とか
そんな提案をしてきた。
いくら慎重に行動してもありえないミスを起こしてしまうタイプの私はそんな事などすでに実践済だ。
旦那は"成功者"達と私をイコールだと思ったのは間違いだと思わないのか、
対処してるのになんでできないんだという話に逆戻りしてしまう。
旦那だけじゃなく
昔、私を変えようとした職場の上司。
それに私は応えようとするほど会社の信用と生産性を下げてしまう思い通りにならない人間だった。
もうこいつは駄目だ、というレッテルを貼られる。
理解しているつもりの旦那も、
他の親切な人間も皆、最終的に私の事を畜生でも見るかのような見下し軽蔑した目で見る。
旦那とはこどもが出来て今まで色々あった。
昔のような信頼や愛なんてないが
うまく心の距離をとって内心他人として接しながら家族として付き合えている。
旦那でさえ理解してくれない。
当事者じゃないから当然かもしれない。
わかってくれって言う方が無理だと気づいた。
うちの父方の血筋がもう完全に「そっち」系だ。
私はそれを受け継いでいるわけで。
大人になったこともあってか父方の人間に対して同類だとは思いたくないが同情はしている。
発達障害という言葉が広がる前から自分自身の違和感を何かでごまかしてきたのだろう。
母は父のそういうところを父のいないところで純粋なこどもに対して何度も愚痴として吹き込んでいたこと。
まだ自分がなんなのかわからなかったこどもは、小さい頃から父のことをそういう目で見てしまっていたことを今では深く反省している。
私はうちの父親やその姉、父方の祖父、祖母の悪いところをほどよく貰っている。
祖父母は難癖ありまくりでここに書ききれるかなと思うくらいだ。
こういう両親から振り回されて父親は可哀想だと思ったし性格も歪まなかっただろう。
それに姉は精神病院に入らなかったんじゃないか。
自分の先祖が何か悪いことでもしてその報いを代々受け継いでるんじゃないかなんて終わらない呪いに縛られてるみたいだ。
私は遺伝が怖い。
もうすぐ8歳を迎える自分のこどもを見てると
遺伝やら呪いやらの言葉が浮かんでどうしようもなく不安になる。
自分によく似てるからもう将来は終わったかも、
なんで私の悪いところばかり似たんだとか、
こどもには申し訳ないが産んでしまってごめんなさいとさえ思った事もあった。
私が悪気なくしていた人として駄目な行動はさせないように
「友達に挨拶しないとか、友達に合わせないのはいけない」
みたいな事は頑張って吹き込むようにしている。
他人に興味を持てない、友達を持つ意味がわからない事を無理矢理矯正される事をおかしいことだと自分でも思うので、
こどもに対してそこは慎重にマインドコントロールというか、人に対して興味を持てるようにと育ててるつもりだ。
幸い今のところは友達と楽しく遊べているので安心している。
ただ
一緒に生活していると喋り方や私の駄目な行動も意識せずに見て真似るので
私がいないほうがもっといい子に育つのでは?
とさえ感じてしかたがない。
遺伝というのは呪いで、周りの環境がどう呪いを解いていくかが肝心か育児をしていてひしひしと感じる。
こんなものは完全に解けないのはわかっているし、ただ幸せに暮らしてほしいだけなのに
生まれつき呪いが遺伝して、呪いを解きながら私がその呪いを知らず知らずにかけていないか心配でしかたがない。
せめて親が"成功者"だとこどもは幸せになってくれるだろうか、
私が世話をすることで余計呪いが解けにくくなっていないか、など
たぶんわたしは一生死ぬまでそのことで気に病み続けているかもしれない。
人間になりたい @underboze
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