第2話 そんな武蔵野で生きている、誰かの夢に問う
ところで地方の田舎からこの武蔵野に移り住んできて、まず実感したことが「夢見るやつが多いな」ということだった。いや、悪い意味じゃなくて。安全で安定な生き方というよりは、なにかを成し遂げようと考えている人に出会すことが多い。まあ、都心ではなくてもやっぱり東京なんだなと、自分もそのうちの一人だというのに他人事のように思う。
誰かの夢は叶うだろうか。
それとも叶わないだろうか。
答えは当然、そのどちらもだ。叶うこともあれば叶わないこともある。予定調和のように全員が幸せになるようにはできていない。そうでなくちゃ意味がない。勝者と敗者、勝ち馬と負け犬。成功と失敗。両者が別れるからこそ、より良い方を目指そうというモチベーションが生まれるのだし。
だけど一番肝心なことは、その夢が叶うにせよ叶わないにせよ、例えば上手いこと事が進んで有名になったりそれで収入を得たり、例えばてんで上手くいかず誰からも見向きもされなかったり。そんな感じで両者が別れるなかで、ふと見上げた月に命が宿っていることだ。
豊かな想像、たゆまぬ妄想。そんなエネルギーはただの石ころであるはずの月に命を与える。誰かの夢が叶って、しかしそれを失ってしまったのではなんの意味もないのだし、例え失敗しても、それを手放さないでいればまた新しい夢へ向かっていける。それは生きていくためのエネルギーであるのだから。
武蔵野は東京とはいえ、都心に比べれば高層ビルも少ない。今日も外に出掛けて、そこら辺の自販機で暖かい缶コーヒーでも買って飲みながらふと夜空を見上げたとき、そこには月が浮かんでいるだろう。昔から今まで、武蔵野は月の名所である。
そんな武蔵野で生きている、誰かの夢に問う。
果たしてその月と目が合うか。
果たしてその月に命は宿っているか。
見上げた想像は、妄想は、夢は、その人生を楽しませているか。
どうだろう?
月と目があう きつね月 @ywrkywrk
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