最終話〜あたしのことを振り向かせたアイツ〜

 帰り道、あたしたちは恋人繋ぎをして帰路についた。九時過ぎに最寄駅に着くと、心配だからって言って家まで送ってくれた。

「今日はありがとう。また学校でね」

「ああ。またな」

 彼の背中が見えなくなるまで見送った後、半日ぶりにスマホの画面を起動した。すると、梨花ちゃんからRineがきていたので、部屋で電話をかけた。

「もしもし梨花ちゃん。今大丈夫?」

「大丈夫だよ。それで?デートはどうだった?」

「楽しかったよ!!それで報告したいことがあるんだ」

「どうしたの?」

「あたしたち付き合うことになったんだーー」

「良かったじゃん、おめでとう!!」

「ありがとう!!」

「桜木のヤツなんかより梶原くんの方が百倍マシだよ。茜ちゃんのこと大事にしてくれるしね」

「確かにそうだね。別れられて本当に良かったよ……」

「これからは梶原くんと楽しい思い出をたくさんつくってね」

「うん!!」

「報告してくれてありがとう。じゃあまた学校でね」

「うん、またね!!」

 梨花ちゃんと電話を終えた後、カケルにメッセージを送った。

『今日はありがとう!!これから宜しくね。彼氏くん』

 我ながら可愛らしいメッセージを送ってしまった。自分で送っておいて少し恥ずかしくなった。その数秒後、彼からメッセージがきた。

『改めて言われると恥ずかしいんだけど(笑)こちらこそよろしく彼女さん!!』

 もう、自分だって言ってんじゃん!!って一人でツッコミを入れる。カケルとはずっとこういうやり取りしたいなーー。



※※



 月曜日がこんなに待ち遠しいと感じたことはなかった。やっぱり好きな人がいるっていいなぁーー。一人で浮かれていると、正門前でカケルを見つけて元気に声を掛けた。

「おはよう!!」

 何やら考え事をしていたらしく、ひどく驚いて怒ってくる。

「おい茜!!驚かすなよ。寿命が縮むかと思ったわ!!」

「その程度で縮むなんて情けない心臓ねーー」

「なんだって!?」

 二人で言い合っていると、如月くんと梨花ちゃんがやってきた。

「朝からお熱いですねーーお二人さん」

「イチャつくなら人目のつかないところでやりなさいよねーー」

 やり取りを見られて急に恥ずかしくなった。そして四人で一緒に教室へと向かう。

 あたしたちは周囲に付き合っているという話はしなかった。訊かれたら答えるレベル。それから、唯一変わったことは放課後一緒に帰る約束をしたことかな。

 


※※


 帰り道、ふとカップルイベントを思い出した。

「そういえば、もうすぐ付き合ってから初めてのクリスマスだね!!

「いつも何して過ごしてる?」

「あたしはね、毎年家族で高級レストランでクリスマスディナーを食べるんだ!!うち、クリスマスと誕生日は豪勢なんだ。カケルは?」

 過ごし方に圧倒されているカケル。

「そ……そうなんだ。すごいね。俺は家でチキンやケーキを食べるくらいかな。それから家族とプレゼント交換してる」

「プレゼント交換!?やりたい!!」

「じゃあさ……今年高級レストランじゃなくてもいい?」

「うん!!カケルと一緒にいたい。楽しみだねーー♪」

 人目がなかったら抱きついていた。代わりに手を繋いで笑顔を向ける。

「ああ。どこで過ごすか決めて帰ろう!!」

「寄り道する場所はいつものところでいいよね?」

「いいよ!!」

 軽食を頼んで席に着いた。

「ちょうどお腹空いてたんだよねーー」

「俺も」

 食べながら作戦会議をしていると、「茜ちゃん!!」と梨花ちゃんに声をかけられた。

「来てたんだね!!今ね、クリスマスのプラン立てていたところだよ」

「えっ、偶然だね。あたしたちもだよ!!」

「どこで過ごすの?」

「私たちはね、遊園地のイルミネーションを観に行く予定だよ」

 少し話した後、如月くんに呼ばれて席へ戻っていった。

「遊園地もいいかもね!!」

「俺たちはやっぱりあそこがいいんじゃないか?」

「もしかして……東京スカイタワー?」

「うん。イルミネーションとかプロジェクションマッピングやるみたいだし。その後、近くにあるレストランでクリスマスコースを食べないか?」

 スマホの画面を見せながら調べた内容を教えてくれた。できる彼氏をもって幸せ♪

「ステキーー!!そうしよう。早くクリスマスこないかなあ♪」



※※



 クリスマス当日。また押下駅で待ち合わせして、タワーへと向かった。中に入る前からクリスマスの装飾が施されていて、めちゃくちゃ可愛い。

「綺麗ーー。カケル早く行こ!!」

 可愛いらしい装飾を見てテンション上がるあたし。そして、頂上からの景色を眺めると、前とは違って見えた。もちろんクリスマスだからとかそういう理由じゃなくて……。

その答えは今この瞬間にある。それは大好きな人が隣にいるから。一緒に楽しい時間を共有できる人がいるっていいな。

「茜、今からプロジェクションマッピングが始まるみたいだぞ。楽しみだね!!」

「うん、楽しみだね!!」

 手を繋いでその瞬間を待っている。周りを見渡すと、カップルが大半を占めていた。ショーが始まると、「すごい綺麗ーー」しか語彙が出なかった。感動していると、後ろからぎゅっと抱きしめられた。

「ここに来て正解だったな」

「うん!!」



※※



 ショーが終わり、ご飯を食べにレストランへ向かった。クリスマスディナーがリーズナブルで食べられるお店があるなんて驚いた。

 ご飯を食べ終えた後、プレゼント交換をした。あたしからはマグカップとハーブティーをあげた。

「ありがとう。早速使うね!!」

 あたしはカケルからのプレゼントの袋を開けた。

「これ欲しかったブランケットだ!!」

 教室が寒くて買おうと思ってすっかり忘れていたから嬉しい。

「ありがとうカケル♪」



※※



 レストランを出た後、まだ時間があったので、近くにあった公園のベンチに座って赤と緑にライトアップされたタワーを眺めていた。

「今日は楽しかったね。毎年、こんなふうに過ごせたらいいな」

「そうだな。また来年も一緒に来ような」

 それから彼はかしこまった様子で、あたしを真っ直ぐ見つめながら言った。

「こんな俺と付き合ってくれて本当にありがとう。ずっと大切にするから、これからもずっと俺の隣にいてください!!」 

「はい!!」

「なんだかプロポーズみたいだね!!」

 彼は顔を赤らめて恥ずかしそうにしている。

「じゃあ……予行演習ということで」

 告白を聴いて我慢できなくなり、自分の唇を彼の唇に重ねた。

「……そういうのってさ、男からするんだろ?」

「その考え方古いよ!!いつの時代の人よ」

「茜って積極的だよな。俺も見習わないと」

 二人で笑い合った。それから、あたしはカケルに抱きついてお礼を言う。

「ありがとうカケル大好きだよーー」

 付き合った相手がカケルで本当に良かった。あたしは今、サイコーに幸せだ。これから先、何があってもカケルと一緒なら乗り越えていける気がする。だから、ずっとあたしの傍にいてね!!



終わり。

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あたしを振り向かせたいアイツ ゆずか @mimie1118

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