〜今日の出来事は一生忘れない!!〜

「話したいことも話し終えたし、どこか行く?」

 あたしがちょうど食べ終えたタイミングでカケルが提案してきた。あたしはまだまだ帰りたくなかったので、門限があるか訊いた。

「ちなみに今日何時まで平気?」

「日付けが変わるまでなら大丈夫だよ」

「補導されちゃうよーー」

 二人で笑い合う。

「それなら良かった。ここね夜になると景色がまたサイコーなんだ!!」

「そうなんだ。それは見ないとね!!」

「じゃあ、それまで何する?」

「タワー内にある水族館行きたいなーー。家族と行ったときはまだやってなくて」

「そうなんだ、そこに行こう!!」

「やったーー。楽しみ!!」

 彼はあたしのやりたいこと何でも聴いてくれる。カケル自身にやりたいことある?と訊いたら、茜がしたいことを一緒に楽しみたいって言ってくれた。



※※



 水族館があまりにも見応えあって、思わず童心に帰っていた。そんなあたしを微笑ましい表情で見つめるカケル。あたしもつられて笑顔を向ける。

 カワウソの手に触れながら「カワウソ可愛いーー」って気付いたら言っていた。すると「茜も可愛いよ」と耳元で囁かれ照れてしまった。



※※



 水族館を堪能した後、日が落ちてきて街の灯りが顔を出す。そろそろだ。あたしが待ち侘びた夜の時間。頂上に戻ろうと言うと、家族にお土産を買いたいとのことで、売店に向かいストラップコーナーで真剣な表情をしている。お土産がストラップなんて珍しいわね。


 

※※



 夜になり、昼間とはまた違う顔を見せた。頂上に戻ると灯りがまるで蛍の光のように美しい。周りにはカップルが増えてきてデートスポットと化している。

「夜めっちゃ綺麗ーー!!すごいね」

「うん……」

 さっきと違って少し元気がないように思えた。どうしたんだろう。しばらくして、真剣な表情を向ける。今まで見たことがなく、雰囲気もいつもと違う……。

「大事な話があるんだけど……」

 じっと見つめられて、あたしも見つめ返す。


 なんだろう。目が逸らせない……。

 

「茜にフラれ続けたあのときから、この気持ちを忘れようとしていたんだ……。でも、やっぱり無理だった!!茜のことを知れば知るほど想いが募ってきてさ。もう自分でも止められないくらい好きなんだ!!茜の大好きなこの場所で、新しいスタートを切らせてほしい。だから……その……俺と……つ、付き合ってください!!」

 あたしは思わず笑ってしまった。

「えっ、何か笑うところあったか?」

「ごめんごめん!!こんなステキな告白してくれたのに最後噛むんだもん。なんかカケルらしくっていいなって」

 それを聴いて落胆していた。そんなカケルの頭を優しく撫でる。

「カケルの気持ちちゃんと届いたよ!!それに前みたいに、ただ『好き』って言われるよりも今日みたいに誠実に気持ちを伝えてくれる方がよっぽど嬉しいよ!!」

 カケルの両手を握る。体温からお互いの熱が伝わる。あたしは満面の笑みを浮かべて返事をした。

「確かに最初は好きじゃなかった。でも、桜木くんと決別するきっかけをくれたり、カケルの良いところをたくさん知ることができてから、あたしの中でカケルの存在がだんだん大きくなってきたんだ。ありがとうカケル!!これからもあたしと一緒にいてください!!」

 その直後、遠くからテーマパークの花火が上がった。なによ、タイミング良すぎじゃないの……。そして気付いたら、手に水滴が落ちてきた。カケルに目を向けると泣いていた。

「やだな何で泣いてるの?」

「またダメだったら、どうしようってずっと思っていたから……。まさかオッケーしてくれるなんて。夢でも見てるのかな……」

 夢なんかじゃないよ。そう思って唇にそっと触れる形でキスをした。

「これで現実だって分かった?」

「うん……」

 泣きながら返事をする彼。とても愛おしい。

「もう泣かないの!!そんなに泣かれたらあたしももらい泣きしちゃうよ」

 あたしの声もだんだん細くなっていく。目には涙が溜まっていた。それを見たカケルに正面から抱きしめられた。あたしも彼の体に腕を回してお互いに抱きしめ合った。今日は、あたしたちの中でも忘れられない出来事になった。



続く。

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