@yuuki_ya

大学1年生の頃、同じ学部の男の子が黒のNIKEのかっこいいエアマックスを履いていた。

興味の無い事は覚えない。私はそうゆう生き方をしてきた。その男の子も全く興味が無いので今でも顔を思い出せないけど、その靴カッコイイね!と興奮気味に話しかけたのだけは覚えている。

すると男の子は少し照れくさそうに「そうでも無いよ。」と言った。いや、別に褒めたのは君自身じゃないし。と思いながら適当にその場をやり過ごした。

1週間後の同じ授業でもその靴を履いてきた。しかしその持ち主は不在で、下駄箱に靴が無造作に置いてあるだけだった。何度見ても良い靴だなと思いながら靴を眺めたが、何だか違う。1週間よりも何だかチンケに見えた。

授業後に男の子が道路を歩いていた。さっき見たチンケな靴は嘘のようにとても男の子に馴染んでいて、2つでひとつの輝きを放っていた。

その時私は思った。靴が特段良いのでは無い、男の子がダメなのではない、2つが組み合わさってるから輝いて見えるんだ。私もそうなりたくてNIKEのエアマックスを買おうと思ったが、週2のバイト代じゃとても買えない代物だった。

私は妥協して安いNIKEのzoom エアマックスを買った。男の子が持っている靴とは比べ物にならない程ランクが違うが、どうにか輝いてみたくて買った。しかしやっぱり私はあの男の子のようにはなれなくてすぐに履くのを辞めた。

それから私はNIKEのエアマックスシリーズが大好きだが1足も靴を買っていない。あの時期以降、黒のNIKEエアマックスは見掛けなくなってしまった。男の子が系統を変えて履かなくなったのか、無くしたのか、私が会わないだけなのか、興味が無いのか。

私が足元ばっか俯いて生きている癖が珍しく利点になった気がする。靴は素敵だ、足元を輝かせてくれるから。

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