第7話 魔王軍、そして俺の行く先
俺の
それらについて話し合うため、再び場所を戻して、会議が再開した。
(カナンはまた元の持ち場に戻ったらしい)
……結構フラットな感じなんだな、魔王軍って。
「というわけで」
やはり会議の進行の役を担うのはララリアだった。
「クロニスの
「え?」
「強さ十分、異論は無い!」
「そうですね……悪い人でもなさそうです」
「では、クロニスを次期魔王候補として第三魔王区魔族選挙に」
「ちょっっっっっとストップ‼」
「どうした、クロニス。今更謙遜か?」
ララリアがとても不思議そうに首を傾げた。へルドラとリチアも「?」という顔で俺を見ている。
「いやいやいやいや、君たちやばいでしょう、自分で言うコトでもないけど、俺怪しくない⁉急に現れて魔王倒して、なのに自分の能力も知らないようなヤツ。しかも俺魔族じゃなくて人間よ?魔王なんてなれるの?つーか、俺の許可すら取らずに魔王にしようとしてるし、言いたかねーけど、さっきの魔王……カイナだっけ?に乗っ取られた理由がなんとなく見えてきたぞ⁉」
いっけね。長文マジレスしてしまった。だってびっくりしたんだもん。しょうがないよね。誰だって、急に魔王になれって言われたらびっくりするもんね。うんうん。
それに対する魔王軍幹部たちの反応は意外なものだった。
「「「あー確かに」」」
「えっ、嘘……だろ⁉ホントに考えてなかったの⁉」
てっきり、皆そんなことは分かっているけど、それでも俺が勇者に見えて、とか、そのリスク以上のメリットがあるんだ!とか言いそうだなと思ってたのに。
え、マジで頭があまりよろしくない?
まあ確かに洗脳が解けて間もない今、考える時間が足りないってのも分かるけど……。
「でも、そんな忠告までしてくれるってコトは勇者様は良いヤツだってことだろう?なら信頼しても良いんじゃあないか?」
あ、そうそうそれ。そういうことを言いそうだと思ってたの。……じゃなくて!
というか。
「そもそも、魔王になるなら魔王の娘だったララリアが良いんじゃあないか?」
そう言うと、少しララリアの表情が曇る。
「確かにそれが妥当なように見えるし、きっとそう言えば皆も賛同してくれるとは思う。しかし、私の父上がカイナにあのようにして負けてしまった以上、”スカーレット”の名が少し頼りなくなってしまっているのではないか、とも思うんだ。だから、そういう意味では、私としては強いクロニスを魔王に推したいと思っているのだが」
「ふむ」
何も考えてないのか、とも思っていたが、彼女は彼女なりに魔族のことを考えていたようだ。魔族たちが、一度倒された血筋の者はまた誰かに負けるのではないか、と不安になることを避けたいのだろう。安心させたいという彼女の優しさが見える。だが。
「なら、俺が魔王になっても同じだと思うよ」
と、俺は進言する。
「結局、魔族からすれば俺なんてただの部外者なワケで。むしろ力がある部外者の方が、不安度は高いんじゃないかな」
力がある、とか自分で言ってるけど、その力を体感したの、二回しかないんだけどね!全然まだ実感ないし、実はそんな力無いんじゃないかって疑ってるけどね!(スライムに負けた時も考えると、デバフとしてだけどそれも合わせて三回か?)
「そうかもしれないな」
ララリアは残念そうに、しかし諦めもつかないようだ。だが。
「それに」
「「「?」」」
「俺としても、魔王になるつもりはないよ。クラセル……俺の故郷なんだけど、そこに戻って静かに暮らそうと思ってる」
幹部たちは俺の言葉を聞いて、気が付いてくれたようだ。
「……そうか、そうだよな。私たちは自分たちのことばかりで、肝心のクロニスの考えを聞こうとしていなかったのか。勝手に、魔王になることがクロニスにとって良いことなのだと決めつけて。……分かった、暫定として次期魔王は私ということにしておこう。だが、もう少しの間、色々と考えてみようと思う」
なんとも暗い雰囲気だが、俺としてもあの町に受けた恩を返さないわけにはいかないのだ。もうしばらくは。俺の自己満足だってことは分かっているけれど、それでも俺が満足するまではあの町のために生きていたいんだ。
両親の代わりに俺をここまで育ててくれた、あの町のために。
そうして、魔王幹部会は終わった。
スライムも倒せない俺が魔王倒したんだが? 零下冷 @reikarei
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