第33話 最終話 約束の日に君の背中を追いかけて

「ちゅんちゅん……」 

次の日も布団で1日過ごしていた……。御幸は学校があるからか……昨日の遅くまでの外出も関係しているのかその日は来なかった。

体に力が入らず、視界もふらふらするがシャワーを浴び、そのまま力が入らず倒れるように寝る。

夜に目が覚めて、チクチクと体に何かが刺さり、体についたものを取る……それは大切にしていた写真だった……。

部屋中に散らばり切り刻まれた写真のかけらを泣きながら集め……セロハンテープで貼る。そういっちゃんのは復元出来ないほど損失されていた。

「なぁどうしたらいいんだろうな……葵、詩音」

2人の写真を見つめ独り呟やきながらも考えていた。

もう……限界だけど御幸を……あの俺が狂わせた子をなんとかしないと……


「ごほっゴボッ……」


ここ数日お腹に痛みとは違う不快な感じがする。食べ物は入らず水も入れても喉の荒れからか狭く感じむせ込んでそれも戻してしまう……。


学校まで後2日、0時を過ぎたら後1日……

「御幸を止めないと……もう取り返しのつかないことがこれ以上続かないように……」

2枚の写真を抱きしめながら……覚悟を決めた。


次の日の朝……体調は最悪だった……部屋の中は黒百合のものすごい激臭に、布団を片付ける気力もなく鉄臭い匂いがし、むせかえる。


台所に行くと……2日前に買ったものをしまい忘れており全て腐っていた。それを尻目にそういっちゃんの部屋に入り杖を手に取る……。


「そういっちゃん……借りるよ」

情けない……もう心も体も限界をとっくに超えている……でも……葵と約束したんだ。葵みたいな素敵な人を見つけられないかも知れない……それでも…お世話になった人たちのために2人の写真を懐にしまい家を出た。


向かう先の景色はどこも見覚えがある。彼女と一緒に歩いた風景……目線は違うが懐かしくも感じまたこっちの町には5年はきていないため変わっているとこもあり考え深くもある。


空を見ると雲一点もない青空気温は34度と言っていたがそれに加えじめじめとした湿気が体力を削る。

化膿した左足に汗が滲みなんとか気力を保ち、所々に見える彼女の背中を追いかけた。


「ピンポンー」

「はぁーい誰ですか……」

懐かしい声がする。

「ガチャ……」

「あなたは……」

どこか葵や御幸の面影がある、彼女達の母親真子さんが出る。

「お久しぶりです……」

「何しにきたのよ、もう来ないで下さいと言いましたよね」

5年前目に涙を貯めながらも、睨みつけそう言われたことは覚えている。さらに胃がきしみ、腹部に感じたことない鈍痛を感じる。真子さんはそのままドアを閉めようとしているため、単刀直入にきた理由を急いで伝える。

「御幸の件です……彼女に逆レイプされました……」

「なんて……?あの子があなたに?あり得ませんあなたが襲ったんじゃないの!」

「ナイフを突きつけてきました、手はロープで」

未だに手首に残った後……をさすりながら。


「…………ご近所さんの目があるから入りなさい」

話を聞いてくれる気になったようで、彼女の背中をゆっくりついていき家に入る。


……あの時と変わりない……あの最初に来た時と。

「それで……御幸は何を、したんですか」

居間に案内されソファーに座った直後睨みつけながら聞いてくる。話は聞いてくれる様子なので……2日前のことを話した。


「あの子やっぱり治ってなかったのよ……外に出さなきゃ良かった」

「あんたがいなきゃ」

「なんで止めなかったの!!」

「………………」

彼女の手首の傷……家族が知らないはずがない……。

最後は罵声を浴びせ顔も見たくないのだろう……声を震わせながらどこかに電話をかけた……恐らく夫にだろうと会話からわかった。

その後、どこかの病院に電話をかけている。

終わった後に

「夫がきますので……あなたに話があるそうです」

「家にいて欲しくはありませんが仕方ないのでそこにいて下さい、くれぐれも他の部屋には入らないように……」

自分でも情けないのはわかっている……嫌われている。さらに1人娘を結果的に傷ものにしたのだ……話を信じてくれただけでも良かった……逆にそれだけ彼女は家でも歪だったということでもあるのか。

目の前がクラクラする……

そのまま動かず静寂だけが木霊する居間でどれくらい待っただろう車の音がして鍵が開くのが分かる。そのまま足音は、こちらに近づき扉が開いた。


「鉄心……お前は」

「あのお父さん……」

「ウゥー!!」

話しかけようとしたら、いきなり鳩尾を殴りかかってきた。それから罵声とともに殴る蹴るを繰り返される。

「お前がいなきゃ!あのクソみたいな姉と一緒の目をしたお前が」

「ウゥ、ガ、オェエ」

「お前のせいで!」

「ガッ、ブォ、カハァー」

「あなた何してるの……!死んじゃいますよ」

途中で上の階にいた真子さんに止められるまでそれは続いた。

「はぁはぁはぁ――」

荒れた呼吸を整える哲太さん、これで終わったかと思ったが……

「真子お前は耐えられるのか、こいつがいなきゃ全て何も起きなかったんだ!あの日家に来なければ」

「…………」

真子さんは答えない……だがこちらを見て心配するより敵を睨みつけるような視線をぶつけてくる。


「もうここまで来たら同罪だ……真子の苦しみを……ようのうと生きてきたこいつに教えてやれ」

「…………」

「警察には行きません……」

恨みつらみがあるのは知ってる……大切なものを失った悲しみはきっと俺以上だろうそれが御幸も苦しめた……もともと警察に行く気はない……捕まってしまったら彼女を止めてくれる人がいなくなるから。


「……こいつもこう言ってるぞ真子」


そういうと彼女は台所からフライパンを持ってきて

「くッ、うぅはぁああ」

それを思いっきり振り回して殴ってきた。どんどんエスカレートしてるのがわかる。途中は俺の持ってきた杖で何度も叩かれ最後は声すら出なくなっていた……。

「グボぅ、あ、あ、あ、」

「はぁはぁはぁ殺していいですよねお父さん?」

一度やみ台所に戻ったかと思ったらその手には包丁が握られていた……。

「真子!それはダメだこいつのせいでまた家族が狂わせられるぞ」

その言葉に彼女は、ハッと傷ついた様子になり包丁を元の場所に戻しにいった。

それを目で追っているといきなり髪の毛を持たれる。

すごい力で何本か抜けているのがわかり、体中の痛さから声にならない声が出る。

「あぁあ」

「御幸は病院に入院させ、出させんその後も学校のある施設に入れる」

「…………」

「お前も2度と会うな成人したらこの街を早く出てけ!」

そう吐き捨てるように俺の頭から手が離れる。この親あってあの子か……


「先に家に送ってやる乗れ」

そう言い放ち手を洗いにいったのだろう蛇口の音がするのがわかる。

その後身体をなんとか起こし車に乗る。顔も腫れ……肋骨にはヒビがが入っているだろう……乱暴なブレーキのたび体中がきしむそんな中……外の景色を見ていると少し離れた山の方にある霊園だろうかそこが光っている……。「すいません、ここでいいです……」

「あ?」

「あとはタクシーで帰るので」

「そんな顔でおろせるか」

やった本人はそんなことを言ってくるがすぐ信号で止まったのを確認しスライドドアを開けて転ぶように外にでる。

「不良に絡まれたとか病院に行く途中て……いいます」

「おい!」

「あなた……」

「ププー!」

「勝手にしろ」

車の交通量が多いため後ろから鳴らされ自動ドアが閉まり車は走っていった。


先程の場所を目指して歩き始める……。

意外と住宅街は人がおらず、道路で転がり落ちた時は、何度も見られたが今は誰もいない街中を歩く……

やっと先程の小高い山へと続く階段を見つけゆっくり、ゆっくり登っていく。


気のせいだったのだろうか……、

階段を登りながら、御幸の行動、裸の写真を撮られたことを思い出す。

これが詩音の見ていた、唯一無二の親友が見ていた景色の一部なのかな、生きる理由もないし、生きる未練もない、葵ごめん、あの日の約束を持って、生きることで卑屈になりすぎず大変なこともあったけど、安定した日々は過ごせたよでも、それでも……目が霞む……階段はあとちょっとなのに力が入らない……。

瞼が霞む中、幻覚だろうか葵が隣を走って行くのが見え、階段を登ったところで影に隠れていのが見える。体を起こしなんとかそこに行くが……周りを見渡してもいない……。気のせいだったのかそう思ったらまた少し先に後ろ髪だけが見えてる……。

かくれんぼ……その後追って見失って追って見失ってを繰り返してとある墓標の前に着く。


そこには「山崎家」と書かれていた。墓跡の隣に有る石碑を見ると山崎葵 享年10歳没と書かれていた。やっとずっと夢にまで見たお墓参りができる……。

「葵ちゃん」

彼女が導いてくれたんだろうか……、手を合わせ心の中でありがとう葵ちゃんと祈りを捧げる。

そのまま体に力が入らず墓跡に背を預ける。


瞼が重い……身体は脱水だろうか……ろくに食べてない……。身体はボロボロで体力も限界……もう眠い。


そっちに行ったらを万を超える拳骨も針千本だって飲むからさ。だからさこっちじゃなくてさ

大好きな人たちがいるところに行きたいんだ母さん、葵、詩音。そういっちゃん‥‥‥ごめんな親不孝ものだけど上手に生きるのがとってもとっても難しくてさ

後に残る人のことなんて‥関係ない。

一時期は苦しむだろうが、今も過去になるから‥‥‥。


「‥‥鉄心くん!」

夢を見ているのかもう死んだのかわからないけどその先には葵ちゃんが手を振って走ってる……。

でも俺は走れ……、手を見て自分の手だが幼くなっていることに気づく。足も……動く。声も

「待ってよ葵ちゃんっ」

君の背中を追いかけて走る。


追いついて手を伸ばそうとした際

彼女は立ち止まって振り返り、ずっと‥ずっと‥‥瞳からは涙が溢れる、もう一度見たかった笑顔……もう一度聞きたかった声で……


「全くしょうがないなっ鉄心くんは」

そう彼女は満面の笑みで答えてくれた。


彼は墓石を背に、痛々しい傷など感じさせないような穏やかな顔で眠った。





約束の日に君の背中を追いかけてEND


――――――――――――――――――――

作者余談欄

いつも読んでくださりありがとうございます!

よければハート等貰えると嬉しいですっ


最終話です。

他のヒロインと結ばれる、葵ちゃんが生きているIFストーリーや、他のヒロイン達の描写を描くかは未定です。時間が作れるか不明なためです。人によっては納得できない最終話かも知れませんが終わらせるのが目標なためこの形にしました。


初投稿のため、読みづらくまた書く時間が中々確保できないため早足展開でしたが最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。

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約束の日に君の背中を追いかけて ゴリラつらみ @j55f3b

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